’06年、まだ自撮りという現代の言葉が常用語として存在しない時代、アラスカの上空36mからヘリドロップするマイキー
Mr.クリエイティブが世間を驚かせた歴史的一枚。
Photo: Mike Basich
マイキーはどんな子供時代を過ごしましたか?
かなり珍しい子供時代を過ごしたよ。3年間ホームスクールをして、その後はシュタイナー教育の学校で学んだんだ。5歳から13歳までは持病だったてんかんと向き合う日々だった。それを乗り越えることができて、それからスノーボードに出会って世界中を滑って旅する生活ができるようになったんだ。’85年ごろに姉と一緒にタホのドナースキーランチでスノーボードを始めて、メタルフィンが付いたウッドボードにハイバックなしのバインディングで滑りまくってたよ。
プロスノーボーダーとしてのキャリアが始まった頃の話を聞かせてください。
スノーボードを始めて5年後の’90年にプロになって、初めてスノーボードでお金を稼げるようになった。翌年にはワールドカップに出られるようになって、ろくに学校には行かずに日本やヨーロッパの大会を転戦したよ。高校を卒業してから10年間は世界中を飛び回る生活だった。
スノーボードの黄金期と言われる時代に活躍をして、恵まれた環境でプロ生活をしていたと思います。コンテストの世界から、撮影などのクリエイティブなスノーボーディングに活動を移した当時の気持ちを聞かせてください。
大会での競い合いの世界にはもう疲れてたんだ。それもあったし、スノーボードの写真にはもっといろんな可能性があるんじゃないかという思いもあった。その可能性をプッシュするために自分のライディングを自分自身で撮る、セルフィーの写真を撮り始めたんだ。当時はセルフィーなんて誰も呼んでなかったけどね(笑)。重いカメラバッグを背負って山に入って、撮る側とライダーの一人二役をこなすのは本当に大変だった。それでも、僕が見ているスノーボーディングを表現できる新しいアイデアだから本気で取り組んでいたよ。’99年からセルフポートレイトを撮り始めて、15年間撮りためた写真を 『The Frozen Chase』という写真集にした。 写真を極めていくのは自分を表現するいい手段なんだ。
ストームを追いかけて、いい雪を滑るためにモノづくりをする
幼少時代から木工などのモノづくりを始めていたと聞きましたが、どんなものを作っていたんですか?
3、4歳の頃から自分の作業台があったし工具も使っていたから、その頃から本当にさまざまなものを作っていたよ。どんなものでも自分で思いついたアイデアを形にすることを両親は許してくれた。10歳くらいの頃には、自分で作ったものをフリーマケットなどで売り始めて、ビジネスの基礎を学んだんだ。モノづくりやビジネスの経験はスノーボーダーとしても生きていると思うし、Area-241やタイニーハウス、241のアウターウェアを作り始めたころからすごく役に立っているよ。
プライベートゲレンデ付きの山小屋、Area-241をみずからの手で作り上げたストーリームービー“A Snowboarder’s Unbelievable Tiny House”
モノづくりの際に、大事にしていることはなんですか?
山で過ごす時間がとにかく好きなんだ。自分の好きな場所で、どれだけ快適に過ごすことができるのか。そのシンプルなことを追い求めることが重要だと思っている。追求していいモノづくりができれば、リッチな生活ができる。お金持ちという意味じゃなくて、心が豊かなライフスタイルが送れるという意味でね。人間はもともとストームを追いかけたり、山で使う道具と一緒に生まれてくるわけではない。だからこそ創造的になって、モノづくりをしていくあらゆる可能性を持っているんだ。それを突き詰めていけば自然のリズムと調和したライフスタイルで生きていくことができると信じてる。自然のなかで過ごしていると、本当に必要なものや何が一番大切かを教えてくれるんだ。
241のアウターウェアをはじめ、プライベートゲレンデやタイニーハウスまで自分で作ってしまうクリエイティビティ溢れるライフスタイルに驚かされます。自身を動かす原動力は?
なんでも自分で作るのが好きだし、スノーボードとそれ以外のパッションをミックスさせるのは自然な流れだったね。自分にとっての夢の遊び場として作ったArea-241も、そのほかに作ってきたものも、山に対する愛とクリエイティブでいることの大事さを伝えることができる。そして、それが自分自身のスノーボーダーとしてのキャリアにもつながっていってると思うんだ。ストームを追いかけて、いい雪を滑るためにモノづくりをする。山で使いたいものを作る。それが241をやっている一番の理由。そういう思いが今も変わらず、スタートしてから30年が経つんだ。
ピックアップトラックで牽引するトレーラーハウスを組み上げた“Trailer Project vol.2(日本語字幕)”