EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

kenji ando ride snowboards 安藤健次 ライドスノーボード

プロスノーボーダーのセッティング論:安藤 ‘ANDY’ 健次 / RIDE SNOWBOARDS

ボードとブーツがバインディングによって完全に固定されるスノーボーディング。どのようにギアを組み合わせ、セットアップするかによって、トリックのメイク率と乗り味は大きく変わる。
スノーボードライフをより楽しんでいけるヒントを見つけるべく、プロライダーたちがどのような思考でギアをセッティングするのかをディグしてみよう。

Photos by: Junichirou Watanabe.
Words by: Masaki Kitae / Epic Snowboarding Magazine.


 

 足が固定されてることから生まれるコントロール性能とパワーを使い、さまざまな場所を楽しめるのがスノーボーディングにおける最大の魅力だろう。粉状のパウダースノーから氷、水、鉄、岩、コンクリートまで、あらゆる場所を滑る、または当て込むことが可能なうえに、その高い着地性能のおかげで高いエアとスピンを楽しむこともできる。僕らがスノーボーディングを楽しめるのは、足が固定されているからといっても過言ではない。その反面、スノーボードは体とギアを固定することによる制約が多い。例えばスケートボードと比べると、スノーボードではオーリーとノーリーをまったく同じスタンスで仕掛けなければならない。サーフィンでは状況によってスタンス幅を変えながらライディングするが、スノーボードではどんな状況でもいちどセッティングしたポジションで乗り続けることになり、シチュエーションごとの自由度は3Sのなかでも圧倒的に低い。だからこそ、どのように自分とスノーボードを固定するかが重要で、そのセッティングに関する知識は抑えたいところ。チョイスするギアや自分のスタイルに合わせたセッティングの理論を明確にしていくのは、ビギナーからエキスパートまで全スノーボーダーにとってのマスト項目といえる。

 本記事では、北海道をベースに滑る毎日を送る、アンディこと安藤健次をフィーチャーし、20年を超えるプロ歴から行き着いた彼のセッティング論を聞いてみた。

 

 

kenji ando ride snowboards 安藤健次 ライドスノーボード

夕焼けをバックに舞うシフティ。アンディはシンプルなアクションで魅せることのできる数少ないライダーのひとり

 

 地元・京都のストリートでBMXやスケートボードに乗るライフスタイルをルーツに持ち、現在もスケーターやフライフィッシャーとしてもギアサポートを受けるマルチプレイヤーでもあるアンディ。遊びの達人は、もちろん道具に関してのこだわりが強い。逆に言えば、道具に関するこだわりがなければどの遊びもこのレベルまで行き着かなかったはずだ。これまでプロスノーボーダーとしてシグネチャーモデルのリリース経歴を持ち、コンテストにムービーへの出演、そしてバックカントリーからゲレンディングまで、さまざまな経験を通過した彼が見出したセットアップとはいかに?

 

kenji ando ride snowboards 安藤健次 ライドスノーボード

Ride Snowboards – Kenji Ando’s Set up
Board:Warpig M(151cm) / Bindings:A-8 / Boots:92

 

 

スタンス幅・アングル

 

 「スタンス幅は、いつも板のレコメンドポジションで乗るようにしているよ。今のWarpig 151は56cm。アングルは前足15度 / 後足-3度が基本。昔は前足+12度 / 後足-9度っていうスイッチライディングにも意識したダックスタンスだったけど、右膝を何回も手術したりで、膝をかばって腰も痛みだしたから、だんだんダックからクローズなスタンスにしていった。0℃にしちゃうと感覚的には前に向いてるから後ろ足は-3くらいがちょうどゼロかなっていうとこに行き着いた。前足も腰への負担をかけずに前を向けるように、少し開いて今のアングルになったんだよね。」

 アンディの言うように、スタンスアングルは乗り手の体の状態に大きく影響する設定ポイントといえる。荷重を逃がさず体幹とボードの中心が合わさった力強いエッジングができることから、後ろ膝を前に入れながらターンをするのがセオリーとして成立しているが、後ろ足が開いたアングルでは膝に大きな負担がかかる。アングルの設定はトリックやターン性能だけでなく、体のケアにも大きく関わる重要ポイントだ。

 

ハイバックローテーション

 

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 ハイバックローテーションはハイバックの取り付け部分のビス穴を調整し、ハイバックの向きをノーズ / テール方向へどのように向けるか設定ができるシステム。ビギナースノーボーダーが見落としやすいポイントのひとつなので、うまく調整できるか不安であれば実店舗を持つプロショップでの購入がおすすめ。

「ハイバックローテーションの設定はノーズ側にもテール側にも倒しやすくするのと、前後ともに荷重したときにハイバックが引っかからないように設定してる。ハイバックローテーションに引っかかりがある状態だと、例えばランディングのときにヒールに乗りすぎて転びやすいっていうことがあるから。」

 

 

センタリング

 

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 ボードの中心と自分の重心をしっかりとセンターに合わせるためのセンタリング。つま先が出すぎているとトゥーサイドターン時にドラグ(つま先と雪面があたる)を引き起こすなど、ライディングに大きく関わる大事なポイントだ。流通しているほとんどのバインディングで、ヒールカップやディスクのビス穴の位置を変えて調整するシステムを採用している。アンディの場合は、使用するボードの特性に合わせて、独自の理論でセッティングしている。

「オーソドックスなシェイプ幅のボードの場合はつま先が軽くはみ出るくらいで乗っていたけど、今乗っているボードのWarpigは太い板だから、普通のセッティングではヒール側の動きがとても重くなってしまうんだよね。だから、太い板の場合はセンターよりも少しかかと側に乗るセッティングのほうが調子いい。人間の身体ってつま先側の動きはやりやすいけど、かかと側は対応しづらいから、かかと側を軽く動かせるように設定することで、滑りやすさもリカバリー能力もかなりアップするよ。だから俺はセンターの位置よりも、その板と自分のしたい動きに合うようにかかとの位置を決めるイメージで調整しているよ。」

 

 

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アルミによる圧倒的なレスポンスを誇るA-8バインディングの特性を生かした、パワフルなパウダーターン

 

 
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ヒールの有効エッジのほんの数センチに乗る。スキルとセッティング術を知る滑り手の世界

 

 

Ride Snowboardsより公開された、アンディが自身の使用するWarpigとA-8セットアップについて語るプロモクリップ “Ride Andy Warpig A8”

 

 

2020-21シーズンより生まれ変わったRIDEバインディング 

「We didn’t set out to reinvent the binding. We set out to perfect it.」

「改善ではない。パーフェクトなバインディングの誕生だ」

 

進化したRideバインディングスをテクノロジーがここに“20/21 Ride Bindings”プロモクリップ

 

A-SERIES 一度慣れるとやめられない最速のレスポンス

 

Ride Snowboardsがこれまで打ち出してきたアルミ製バインディングのベースプレートを一新した。アルミベースならではの驚異的な反応の速さはそのままに、ホールド感とフィット感を意識したアップグレードは、一見大きな変化に感じられないが、着用するとその進化を体感できる。衝撃吸収性の高いフットベッドには全モデルにカントが入り、快適かつ軸のぶれないライディングをサポート。
20年を超えるRideのバインディングの歴史が詰まったAシリーズは、究極のレスポンスを求めるすべてのスノーボーダーにおすすめする逸品。

 

 
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Aシリーズのラインナップ。Aがメンズモデル、ALがウィメンズモデル。

 

安藤健次コメント
「アルミの魅力はやっぱり、反応の速さだよね。あと板とのダイレクト感がいい。トーションのコントロールもしやすいから、グラトリする人だったらプレスしたときの上がり方だったりも全然違うし、前足と後足でそれぞれ別のエッジコントロールもできるしね。アルミっていうと、硬くて疲れそうとか言われるけど、Rideの場合フットベッドのクッション性が良いことで、アルミではあるけど装着感は樹脂製のバインディングとほとんど同じフィーリングになっている点も気に入ってるよ。アルミのバインディングは硬い板や太い板を柔らかく扱えるようになる点も魅力だね。」

 

 

C-SERIES しなやかなスタイルを求めるすべてのスノーボーダーへ

 

2020-21シーズンより発表されたCシリーズは、樹脂とアルミの組み合わせたベースプレートを採用するコンポジット(複合=Composit)仕様。ジブ、ジャンプ、パウダーなどすべてのフィールドにおいて、よりスムースなライディングを求めるスノーボーダーに向け開発されている。ジブトリックでの絞りや空中でのポークなどメリハリのあるスタイルや、イージーなフィーリングを好むユーザーが求めたラインナップが満を持して登場した。カントの入ったフットベッド、アルミ製のヒールカップ、ハイバック、ストラップはAシリーズと同じ仕様を採用している。

 

 
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Cシリーズのラインナップ。Cがメンズモデル、CLがウィメンズモデル。

 

安藤健次コメント
「ヒールカップ調整の幅広さ、そしてそれを設定したらズレないっていうのがいい点だと思う。ジブだったりグラブで刺したり、スタイルが出しやすいのも魅力。柔らかいフィーリングや、よりフリースタイルな滑りがしたい人にはピッタリなんじゃないかな。」

 

 
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トータルフレックスバランス

 

「板の太さとフレックスによって、ブーツとバインディングのマッチングは大きく変わるね。俺も細い板に乗っていた頃は硬いブーツを履いていたけど、太くてエッジが遠い板を乗ると、足首で動かす前にスネで反応してしまうところがあって。それが苦手だから、太い板に乗るようになってからはRideのなかでも柔らかい92を選ぶようになったんだよね。でも足回りがすべて柔らかいと相性が良くないから、硬いバインディングを使ってバランスをとって、セットアップの完成度を高くしているよ。」

「すべて柔らかいギアを使うと、支点がなくなるから低速域でしか楽しめない。やっぱりオールラウンドにどこでも楽しみたいんなら、足回りすべて同じフレックスにするよりは、硬いセットアップなら柔らかいギアも混ぜたり、その逆だったり、どこかメリハリをつけるほうが俺はいいと思うな。ただ、例えばバリバリのコンペティターで全ヒットを完璧に着地したいっていうときは、すべて硬いセットアップのほうがいいけどね。自分のスタイルによって選ぶのがいいんじゃないかな。ただ、すべて硬いセッティングでコケると体の負担も大きいからそこは注意(笑)。」

 

 

セッティングのコツ

 

「モノ的には、セッティングの調整がしやすく、かつ調整幅が広いギアを選ぶのが大切。考え方としては、自分の滑りの“悪いところ探し”をしっかりすること。いいところだけを見がちだけど、俺は悪いところをみつけたら勝ちっていうくらいに思ってる。それを見つけたら直すだけだから。そしてそれが、セッティングだけで直ることもある。例えばジャンプの着地でかかと側に転びやすいとかであれば、ヒールカップやセンタリング、ハイバックローテーションを調整するべきだし。ライディング中に感じる違和感にしっかりと向き合って明確にすることで、自分と使っているギアに合ったセッティングが見いだせると思うよ。」

 

 

 

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安藤健次 / Kenji “Andy” Ando
1973年2月16日生まれ、京都府出身。Andy the Daddyの異名を持つ札幌のマルチプレイヤー。20年以上に及ぶライダー歴のなかでシグネチャーモデルのリリース、シグネチャートリック、そして多くのセッションで爪痕を残し続け、各地のシーンで重鎮に語り継がれるストーリーを持つプロ中のプロ。
メインスポンサー:Ride Snowboards

 


Ride Snowboards
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Ridesnowboards.com
Instagram:@ridesnowboardsjapan

 

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