EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

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“GROOVE” 高橋博美 × 橋詰智絵

東北のシーンをリードし続けるBigtimeクルーの高橋博美が、橋詰智絵という名の若手スノーボーダーと共同の作品を発表。
ストリートとバックカントリーで活動する日本人女性ライダーとして実力、実績ともに国内トップクラスの博美が、なぜ無名の若手にフォーカスした作品を送り出すのか? 
本記事にて初公開となる”Groove”に出演するふたりに、ムービーのバックストーリーを聞いた。

Interview by Epic Snowboarding Magazine, Photos by Bigtime, Cover shot rider: Chie Hashizume

 

“Groove” Movie by Bigtime

 

 

hiromi takahashi 高橋博美

高橋博美

 

今回のプロジェクトを始めた経緯を教えて下さい。
自分の経験の中で感じてきたスノーボードのリアルな良さを今のガールズスノーボーダーに少しでも伝えられたら、また面白いシーンができるんじゃないかなと思った。

若手の女性ライダーは他にもいると思いますが、彼女を選んだ理由はなんですか?
智絵はBigtime主催のイベントによく来てたから滑りを見る機会はあった。選んだ理由はスキルよりもスノーボードが好きだって気持ちが滑りに出てたから。特に女の子は好きって気持ちが強くないと撮影はハード過ぎて途中で挫折すると思うからそこを一番重視してたよ。

彼女を連れ出すにあたり、雪崩や遭難などリスク面で意識していたことはありますか?
智絵の場合は撮影とかバックカントリーをかなりナメてたから、まずは安全なポイントを選んで、私たちが普段やってるレベルのアイテムにチャレンジさせた。経験することで身をもって自分の実力を理解してないと、口で説明しても伝わらないでしょ? 雪崩や遭難など、滑り以外でもリスクが高いってことをイメージできないと事故に繋がると思うから、智絵にはつねに自分で考えてもらうようにしてたかな。

 

映像を観てわかる通り、とりあえず最初から最後まで転がりまくってたよ(笑)

 

バックカントリーに連れて行き始めたころ、彼女はどんな滑りをしていましたか? 
映像を観てわかる通り、とりあえず最初から最後まで転がりまくってたよ(笑)。最初は滑り自体にも諦めとか不安とかネガティブな感じが出てた。 お前は何しに来たんだ? って何回もキレたよ(笑)。撮影後半は“残したい”って強い気持ちが滑りに出てきて、変わってきた。人は環境で変わるって言うけど、智絵が“人として”成長したことで滑りが良くなってきたんだと思う。

自分自身はどのようにバックカントリーを滑り始めましたか?
Bigtimeのみんなと春山から入りはじめた。以前は自分はクルーのストリート班だったから、バックカントリーの撮影にはたまに行く感じだったんだ。最初は自分も全然できなくて毎回悔しいし、体力もしんどいし、クルーのみんなに申し訳ない気持ちもあったし散々だったよ。負けず嫌いだから行くたびにできない自分にムカついて、シーズンを重ねるたびに山に上がる回数がストリートよりも多くなっていったんだよね。

そのときバックカントリーのスノーボーディングに触れてみて、感じた魅力はなんでしたか?
難しさにハマった感じ。バックカントリーは自由すぎて難しい。ここで何ができるか? 雪質は? ジャンプならアプローチの作り方ひとつで変わる。考えてイメージしてって過程が多いだけ、それが形になったときは最高だ! って思う。行けば行くほど発見があるし、ユッキー(杉本幸士)とマツくん(松浦広樹)の滑りを見て、また次の自分の目標ができる。 それと、バックカントリーを始めてからストリートの滑りも変わったんだよね。イメージの仕方が変わったのか、攻めれる範囲が大きくなった。もしストリートだけやってたら絶対あんなのやってないと思う。

hiromi takahashi 高橋博美

 

ひとりの若手スノーボーダーと1シーズン過ごして、感じたことを教えてください。
撮影中の智絵を見てて昔の自分もこんなんだったなって思ったんだけど、連れていく側としては正直なかなか大変だなって(笑)。自分がバックカントリーを始めたばかりで不慣れなときも、いつも撮影に連れて行ってくれてたクルーのお陰で今の自分がある。今までどれだけ自分が恵まれた環境でスノーボードをしてたのか、改めてBigtimeクルーに心から感謝したいって思った。だから自分も誰かのきっかけになって、その子のスノーボード人生に関われたら本当にいいなと思った。

自分自身のスノーボーディングに変化はありましたか?
自分の滑りの変化といえば、なぜかメイク率が上がった(笑)。後輩に見られてる方が調子が上がるのかもしれない(笑)。

 

前を向いてる子に自分なりに夢を与えたかった

 

最後に、なぜここまでして無名の若手を撮影に連れて行こう、育てようと思ったのですか? 
前を向いてる子に自分なりに夢を与えたかったから。大会と同じように、撮影での経験は撮影することでしか積めない。そして、その経験は決して無駄にはならない。自分が今までやってきたことは決して華やかな世界ではないけど、夢や目標が溢れてる。いい歳になっても、シーズンが終わるたびに来年はあそこに行きたい。もっともっと上手くなりたい。って思えるようなスノーボーディングを若い子たちに伝えられたら、きっと日本のガールズシーンもなにかしら変わって行くのかなって。自分がきっかけになって、その子たちのスノーボード人生に夢や目標が増えたら、ライダーとしては最高の仕事だなって。あれ? いいこと言いすぎ?(笑)

 

 

chie Hashizume 橋詰智絵 

橋詰智絵

 

今までどのようなスノーボードをしていましたか? 撮影やバックカントリーの経験はどの程度ありましたか?
パークも好きだったけど、フリーランしながら遊べるとこ探したり、雪降った日はパウダー滑ったりゲレンデで色々遊んでました。撮影の経験はなくて、バックカントリーはツアーで数回経験した程度です。

最初はバックカントリーでの撮影を軽く見ていたと映像内で話してましたが、どこまでなら自分もできると考えていましたか?
パークでやってることはできると思ってて。ラインは途中でノールを飛んだりとか、遊びながら滑り降りてこれるかなとか考えてました。博美さんの映像を見ても、自分にもできると思ってました。

 

今までパークで普通にやってたことができなかった

 

さまざまな壁とぶつかることがあったと思いますが、印象に残っていることはなんですか?
映像で観る世界は楽しそうだったから、そのイメージで来たら全く違ってた。キッカーはアプローチは短いものから先が見えないのもあるし、毎回形が違くて今までパークで普通にやってたことができなかった。

ラインやターンの撮影にもトライしてましたね。
ラインの撮影では、上に登ったら下が全く見えないから本当に怖かったです。自分の滑るラインを確認してから行くけど、実際ドロップポイントからは別の斜面のように感じて。ドロップしてからも雪質が変わるし、滑りながら地形や雪質の状況判断もスキルのひとつだとわからされました。

良かったことや勉強になった点などは何ですか?
イケると思ってたようなところも、撮影となると吹っ飛ばされたり、自分の今のスノーボードスキルを知れて良かった。そこで、どう感じて、またどう滑るか。気持ちの持ち方だったり、勉強になることがたくさんありました。

Bigtimeとのバックカントリーの経験前と経験後、自分の滑りや考えで変わった点を教えてください。
スノーボード=人。上手くなりたいとばかり考えて滑ってたけど、初めてのバックカントリーでの撮影を経験して、人と真剣にぶつかって向き合って、少しずつ自分自身もライディングも、“ただメイクできた”っていう感覚から“絶対メイクする”って意識に変わったんです。もっとスノーボードが楽しくなったし、技術も変わったし、スノーボードしてるときの感情が強くなりました。あとで映像を見ても、今までの自分と違うなって思いました。

 

“強い気持ち”を持つこと

 

撮影のときにもらったアドバイスで、一番印象に残っていることはありますか? 
やっぱり“強い気持ち”を持つこと。これは私が諦めたときに博美さんから言われた言葉。その後の撮影は今までと違うもので、メイクしたときは嬉しくてしょうがなかったです。

撮影するにあたって心がけていたことは何ですか?
ずっとついてくのに必死だったけど、最後は気持ちで負けないって思いでやってました。

これからやっていきたいと思う理想のスノーボーディングと目標を教えてください。
自由に楽しみたい。目標はでっかく、先輩を超えることです!

 

高橋博美 / Hiromi Takahashi
1984年5月17日生まれ、宮城県出身。ストリートからバックカントリーまで、男気で魅せるライディングで数々のフッテージを残し続ける姉御肌プロスノーボーダー。ジェス・キムラによる映像プロジェクト『Uninvited』よりパートが全世界に発信されたことも記憶に新しい、日本のガールズシーンを代表するオールラウンダー。
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橋詰智恵 Chie Hashizume
橋詰智絵 / Chie Hashizume
1993年4月1日生まれ、東京都出身。2015 – 16シーズンまでは白馬をメインに滑り込み、大会を転戦。Bigtimeの主催するイベントへの参加を機に、高橋博美の目に留まり、東北のバックカントリーでの撮影に誘われたラッキーガール。