EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

Ride snowboards ライドスノーボード

RIDE SNOWBOARDSのデザインチームが選んだスノーボーダーとしての選択

長い歴史が裏付ける品質とオリジナリティのある発信で注目を集め続けるスノーボーダーズブランド、Ride Snowboards。
2019年冬、同ブランドが白馬にデザイン拠点を置き、ふたりのデザイナーが2ヶ月間にわたり滞在。
彼らが神秘のパウダー大国と呼ぶ、我が国ニッポンで生まれたクリエーションを追った。

Photos by: Junichirou Watanabe.
Words by: Masaki Kitae / Epic Snowboarding Magazine.


 

 “毎日好きなように滑りながら生活したい”。これは多くのスノーボーダーにとって共通する理想のライフスタイル。 スノーボーディングに虜になってしまった者であれば、 一度は想像した経験があるといえるこのライフスタイルを実現させたふたりのデザイナー、ローレン・オカとデイブ・バンクス。朝イチパウダーを好きなだけ滑ってから創作活動に向き合う、“究極の働きかた改革”を実現させた彼らのガイド役となったのは、白馬をホームとするRide Snowboardsライダーでありながら、Epicのエディターワークも担う北江正輝。育った環境やバックボーンは違えど、同じ土地で彼らとでひと冬を過ごし、生まれたクリエーションを取材するなかで見えてきたモノとは。それは、スノーボーダーとして共鳴する感覚とRideブランドのアイデンティティだった。

 

 

Ride snowboards ライドスノーボード

 

 

パウダーのコンディションに合わせた、完全なフレックスタイム勤務

 

 

 「今年は白馬にデザインの拠点を置きたい。」シーズン前の秋に、Ride本国側から連絡があったときは本当に実現するのか半信半疑だった。ブランドマネージャーのジムがリクエストした物件は、ハイシーズンの2ヶ月間に作業ができる部屋に3ベッドルーム、なるべく山に近い立地。世界各国から訪れる人が増え続けるここ白馬で、この条件の物件を探し出すのは至難の技と思われたが、運良くほぼ条件どおりの新築コテージを見つけることができた。作業をするための部屋はなかったものの、彼らは空っぽのガレージを見て、ここにスタジオを作ると決意。ストーブ、デスク、プリンターなど、必要最低限の備品をアマゾンで手配し、3日後には立派な作業スペースが出来上がっていた。
 彼らの日々のルーティンといえば、午前中はライド、午後にスタジオワーク。山の雪の状況が良ければ丸1日滑り、フレッシュな雪がなければ数日間にわたりデザイン作業に没頭していた。朝イチのシャトルバスに乗り込むような滑りモードの日もあれば、グラフィックのアイデアがひらめいた日は徹夜で作業する日もあったという。雪を降らせる低気圧とそれぞれの創作活動に合わせた、完全なフレックスタイム勤務。白馬で過ごした2ヶ月間で、いま世界各国の店頭に並んでいる2020-21シーズンの全ラインナップのデザインワークの大半をやり遂げた。

 

 

Ride snowboards ライドスノーボード

 

 

THE TEAMWORK

 

Ride snowboards ライドスノーボード
LAUREN OKA(ローレン・オカ)

 Ride Snowboardsのグローバル・デザイン・マネージャーであるローレン。大学在学中にRideへの入社が決まり、卒業式の翌日には地元シンシナティを後にし、Rideがオフィスを構えるシアトルへ移った。それ以来デザイナーとしてブランドイメージの中核を担い続ける。 Japan Design House滞在時には、Rideの全ラインナップの監修と、同ブランドのなかでもひときわ異彩を放つボードラインナップである、Pigシリーズ(Warpig、Superpig、MTNpig、Twinpig)のディレクションを担当。
  「雪山の麓でのライフスタイルや世界有数のパウダーを滑る毎日はとにかく最高の気分だった。リスペクトし合うカルチャーや人々に囲まれて、今までに感じたことのないような落ち着いた空気感のなかで過ごせたことで、クリアなマインドを保ち続けて仕事に向き合えたの。白馬の町から見上げる山の景色も素晴らしくて、雪や山から受ける刺激を感じ続ける日々だった。」と白馬滞在時のことを語ったローレン。そして彼女は毎週のように白馬から東京に通い、トレンドやインスピレーションを持ち帰ってきていた。日本が誇る山岳地帯と世界最大都市である東京。ふたつの土地からの影響を存分に受けてクリエーションに向き合っていたようだ。
 加えて特筆したいのは、広島を出自に持つ日系ファミリーのもとに生まれた彼女にも、僕らと同じく日本人の血が流れていることだ。そして、彼女の「日本に住んでみたい」という発言がこのプロジェクトの発端と聞く。ひとりのスタッフの“自分のルーツを知りたい”という実直な思いが、いわばブランドの全ラインナップのデザインに影響を与えている。ここにRideブランドのアイデンティティの背景を見た気がした。洗練されたデザイン性でありながら、人肌の温度があるグラフィックやコンテンツ。そして、Rideはブランドの3つの核のひとつとして“チーム”を掲げている。Rideにとってこの言葉の意味はライダーだけでなく、スタッフも含まれていることを今回のプロジェクトで知った。

 

 

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Dave Banks(デイブ・バンクス)

 2000年代前半よりスノーボードシーンにおけるデザインワークに携わり、これまでさまざまなブランドでアイコニックなグラフィックを世に送り出してきたデイブ・バンクス。2016年にRideのグローバル・シニア・グラフィックデザイナーに就任し、WildlifeやTwinpig、Algorythmなどのボードをはじめ、バインディングなど数多くのプロダクトのグラフィックを手掛けている。自身のアートプロジェクトであるSkull Mountainでの発信や、アートショウを開催したりと活動は多岐に渡る。彼をデザイナーと呼ぶのも正しい表現だが、デザインワークもできるアーティストというほうがしっくりくる男だ。そしてなにより、日本への関心がいつもこちらの想像以上に高い。今まで日本とアメリカの違いやカルチャーについて、ここまで話をしたことがあるだろうか? と思わされるほど、デイブとはグイグイと深いところまで会話が進む。日本語を取り入れたグラフィックに取り掛かっている時期なんかは、おかしいところはないか? と確認のための連絡をマメにくれる誠実さを持つアーティストだ。今回の滞在期間で、商品化されなかったモノまで含め多くの作品を残した。
 「食事から満員電車での振る舞いまで、あらゆる場面で感じた細かい配慮が素晴らしいと思ったよ。それと独特の景色、とくに古代の彫刻のようなルックスの日本の木々は印象的だった。あとは、やっぱりなんといってもパウダーだよ。人生でベストと思えるようなランを何本も滑って、デザインハウスに戻って自分の作品に向き合うという夢のような生活ができたのが、いちばん思い出深いね。」と日本での生活を振り返っていた。結果的にパウダーの話になるあたりがデイブらしい。相当に滑り込んでいたようだ。
 デイブが日本滞在時に多くのデザインやアートピースを残したなかでも、ふたつの作品に限っては手描きで仕上げるフィジカルな手法を用いた。アマゾンから届いたダンボールの裏にお気に入りのポスカマーカーを走らせ、完成した原画はボードとバインディングのプロダクトに落とし込まれている。この原画は白馬のスノーボードショップGARAGE 902と、デザインハウスとなった建物のオーナーである宿泊施設、Morino Lodgeの壁にそれぞれ飾られている。

 

ride snowboards dave banks

 

ride snowboards ライドスノーボード カタログWildlife
「ローカルから教えてもらったカモシカのことが気になってしょうがなくて、滑りに行くたびに角の生えたグレー色の生きものを探していたよ。ついにカモシカと遭遇することができたときは、本当にマジカルな出来事に感じたんだ。ダークな水晶のようでミステリアスな目を持つ、 山の守護神だよね。カモシカは僕にとっては日本の山々を象徴する生きものなんだ」
ride snowboards ライドスノーボード カタログC-10 Binding / Kuma Dragon
「ある週末、東京に向かう新幹線に乗っていて寝ていたら突然、クマの頭を持つ龍のビジョンが舞い降りてきたんだ。後ろにオレンジ色の稲光が刺していて、まるでアニメのなかの出来事みたいだった。すぐに目が冷めて、急いでそのイメージをスケッチブックに描き残したよ。その時点で、これはプロダクトラインナップに入れるべきだと決意していたんだ」

 

 

東洋のパウダー大国、ニッポンから受けたインスピレーション

 

 

 僕は彼らが白馬に滞在している期間、撮影の合間を縫って神社や温泉に連れ出したり、白馬ローカルの鉄板ルーティンでもてなした。だがそうする以前に、感受性の高い彼らは普段の生活のあらゆる瞬間から、日本独自のカルチャーを感じていたようだ。3万8000年前から人が生活する単一民族国家である日本は、多国籍文化のアメリカで育った彼らにとって相当にユニークなカルチャーを有する国だろう。この東洋の島国がもつ独特の風土と文化に触れ、アーティストとしてあらゆる影響を受けていると語っていた。

 

 

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白馬のデザインハウスにフォーカスしたムービー“RIDE Japan Design House”

 

“まずは滑ること”。スノーボーダーとしてピュアに生きる姿

 

 

 グローバルブランドでありながら、ブランドの中核のひとつであるデザイン拠点をパウダーシーズンの日本に置くという事例は、Ride以外に未だかつて聞いたことがない。スタッフのひとりひとりがスノーボーダーとして、“滑りたい”という純粋な熱意を持ち続けていることが、この大胆なアクションを実現させた。ブランド全体で共有するこのマインドとフットワークの良さから生まれる斬新な表現方法が、今のRideブランドを形づくっている。打ち出すメッセージや、グラフィックから溢れ出るオリジナリティ。そして、ギアの品質に対するこだわり。これらはすべて、ユーザー、ライダー、スタッフがより良い環境で“ライドするため”という、スノーボーダーとしてのアイデンティティから生まれているに違いない。

 

 

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03-6858-2311
Ridesnowboards.com
Instagram:@ridesnowboards

 


Ride Snowboards 2020-21 Catalog(PDF: 6.1MB)