EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

goro komatsu 小松吾郎 POW Protect Our Winters

後ろから見て、イェ〜!となる瞬間。「EPICをやる理由」

 Epic Snowboarding Magazineの北江正輝です。
 このEditor’s Logですが、初めて書くことだしざっと自分が何モノなのかを書かせてもらうと、私は2017年にクリエイティブディレクターの分部康仁とともにこのEpic Snowboarding Magazineを立ち上げた編集者であり、これまで12年ほどライダーとして活動しているスノーボーダーでもあります。自分の滑りは白馬連峰・八方尾根を拠点とするHACHI Crewなどから発信しています。

 メディア編集者で現役ライダー? となった方もいるかと思います。たしかに、このふたつの肩書を持つ人間はあまりいない。なぜならライダーは表舞台のプレイヤー。かたや編集者はライダーの活動を引き立てる裏方であるから。相反するふたつの立場で中途半端なことをしていれば、スジの通らない状況を作ってしまうこともあり得る。まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざ通りの結果を招いてしまうでしょう。そもそもこのふたつの肩書きに挑戦する機会を得たスノーボーダーもほとんどいないかと思いますが、スノーボードの楽しさを人に伝え、みんなもっともっと深くこの遊びにハマってもらうために発信する役目を担う。というコアな部分は同じです。(ただ、実際のライディングに対する感覚はまた別。なにかしらで自分超えをして、自分自身を満足させられるのか、という世界でもあります。)
 とにもかくにも、“滑り続ける”という基本的なライフスタイルは変えるつもりはなく、そこは絶対的な基準。「滑れなくちゃあやってらんねぇ」ということですね。それに、自分自身のスノーボーディングに納得するまで向き合い、その先の世界を見てからではないと書けないコンテンツもあるはず。とにかく、スノーボーディングという遊びは最高で、これナシの生活なんか考えられなくなってしまっているわけですね。

 自分のなかでEpicを始めた理由であり、向き合うテーマは、3つ。

 ひとつは、“ライダーたちの活動を残すプラットフォームづくり”。
 2010年代以降、SNSの台頭により多くのスノーボーダーたちの映像や写真が、SNS内でチェックできる便利な時代になりました。新しいトリックやアクションが国境を超えてオンタイムでシェアされ、これまでと比べモノにならないくらいの効率でスノーボードの情報が手にはいる。これはこれで素晴らしいし、自分たちもこの流れの恩恵を受けています。とはいえ、SNSの情報はフィードを水のように流れていき、インスタントなモノになっていく。早い、安い、お手軽。牛丼チェーンのウナギもいいかもしれないけど、やっぱり鰻屋のノレンをくぐって、うな重を食べるのも気分がいいのは間違いない。スノーボーダーたちの表現活動が、インスタ映えするスイーツと同じプラットフォームだけで完結している状況ってのは、なんだか寂しいもんです。ライダーたちがどんな思いでやっているかを身を持って知っているだけに。人生における大事な時間をスノーボーディングに捧げ、追求しているライダーたちが全国にたくさんいる。イケてる滑り手たちが活動した軌跡をアーカイブして残していくことのできる、インディペンデントなプラットフォームづくり。Epicさえあれば、SNSのシステムが崩壊してもライダーたちの作品は残る。そんな気持ちで向き合っています。

 ふたつ目は、“スノーボーダーがもっとスノーボードにハマる”。というところ。
 これは言葉通りでいたってシンプル。スノーボーディングの魅力の感じかたは、人それぞれで正解はありません。そしてやればやるほど、そのときの自分に合う魅力を見つけ、深みにハマります。さまざまなスタイルのカッコいいスノーボーディングを見て感じて、もっとハマってほしい。そんな思いがあります。新しいトリックに挑戦したり、トリックに飽きたころにはターンの奥深い世界に気づいてしまう。せっかくスノーボードに出会ったのなら、飽きてしまったり、やめるのなんか勿体ない。とことんハマっていきましょう!

 そして最後に、“世代の循環”。
 10代〜20代前半のスノーボーダーと話していると「〇〇の〇〇さん? それってレジェンド系の…ライダーの人でしたっけ?」ということになったりする。で、33歳の自分は「あの人超ヤバいのに、知らないんだ。マジか。」となってるワケです。とはいえ、どんなにシビれる功績を残していても、よく知らないのであれば当然の反応ですね。その逆に上の世代の先輩たちも、イケてる若手たちのことを知る機会も少ない。スノーボード専門誌とシーズンに一度のビデオ作品でしか情報が得られなかった時代を過ごした世代と、SNSやネットで無料かつ膨大な情報を得るのがデフォルトの世代。そしてその移り変わりをもっとも感じながら過ごしたのが、僕らの世代(今の30代)だと思います。どのシーンやカルチャーにも言えることだと思いますが、やっていることがスノーボーディングである以上、パイオニアの人たちが切り拓いたフィールドで遊んでいることに変わりはない。であるにも関わらず、情報のチャンネルが変わったことで、世代間の認識は大きく変わっています。とはいえ、なにがカッコいいのかという感覚そのものは、どの世代でも変わらず普遍的なハズ。誰が、なにが、イケているのか。どれがフェイクでなにがリアルなのか。世代を超えて伝わることがあると信じています。先人たちが実験を繰り返して切り開いたシーンに、次世代の強烈な突き上げがそれをアップデートすることで、循環して濃くなる。そのサイクルが回る手助けをEpicができればいいな、という思いがあります。

 いろいろと書きましたがシンプルにいうと、世代ごちゃまぜのメンツで一緒に滑ってて、誰かが繰り出した滑りを見て後ろで「イェ〜!」ってなってしまう瞬間の感覚を共有したいということです。この感覚はプロライダー、メディア、ショップスタッフ、今年スノーボードを始めたひとでも共有できる、シンプルな歓喜だと思います。
 それを一緒に滑るたびに見せつけてくれる、小松吾郎というスノーボーダーがいます。「[関東焚火會] EP2:世界で2番目か3番目に好きなスノーボーダー」でDiggin’ MagazineのDie Go氏も言うように、「そこでそれ〜!?」を連発する先輩です。
 ご覧いただきたい下記の映像「あ〜俺も飛ぼうと思ったのに〜イェー! – THE LOST TAPES | Goro Komatsu -」の撮影日は、シーズン頭の12月20日。日本の本州であれば普通なら身体や感覚をバックカントリースノーボーディングに合わせていくこの時期に、まっさらの天然地形でこの飛びっぷりからの、尾根スジにビタビタに着ってる。スピンしてないとかグラブをしていないとかそんな価値観はココでは野暮。ゴローくんらしい自由奔放なライン取りに、カメラを回しながらブチ上がってました。俺の行きたいラインは獲られたけど(笑)。
 Epicを立ち上げてまだひと月ほどしか経ってない当時。「そうそう、これこれ。こういう感覚を伝えたいんだよな」と思わされたパウダーデイでした。

 自然遊びのプレイヤー目線で活動する環境保護団体、POW Japan(Protect Our Winters Japan)のことや、ゴローくんのヒストリーを聞くことができる関東焚火會、EP1EP2ともに要チェックです。

 さて、話は変わりますが、去る7月10日に気象庁が発表した情報では「一部にラニーニャ現象時の特徴も見られる」、「今後秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性がある」そうですよ。
大雪に期待したいとこですね。

 それでは、また。

Masaki Kitae
(Epic Snowboarding Magazine)

 

 

 

 

 

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