これまでさまざまなムービーでパートを披露してきたカリフォルニア出身のビデオスター、アンドリュー・ブリュワー。
ストリートレールのメッカといわれるフィンランド・ヘルシンキを拠点に活動し、圧倒的なフッテージ数と持ち前のクリエイティブなライディングでメキメキと頭角を表すアップカマーのヨーナス・エロランタ。
ふたりのストリートヒッターが2018年、『Stinky Movie』の撮影のためブルガリアで相まみえ、初セッションが行われた。日本発のライダーズブランド Death Labelに乗るこのふたりが見た、知られざる東欧の国、ブルガリアのストリートとは?
Interview by Epic Snowboarding Magazine. Photos by Danny Kern.
Special Thanks: Stinky Socks, Garage Inc.
Andrew Brewer / アンドリュー・ブリュワー
Photo: Danny Kern
2017-18シーズンは『Stinky Movie』の撮影でブルガリアに撮影トリップに行っていたけど、どうだった?
最高のトリップだったよ! 新しい出会いもあったし、ヨーロッパはいつ行ってもいい時間を過ごせる場所。こうしてほかの国を訪れて、リスペクトし合えるスノーボーダーたちと出会ってハングアウトできるのは最高なことだよね。
スポットや地形もいつもと違うと思うけどブルガリアのストリートはどんな場所?
いちばん印象に残ったのは、スポットがどこも古かったこと。廃墟みたいなところとか、いい雰囲気の古いスポットが多かった。新しい建造物や人の目につきやすいような場所が多いアメリカに比べてやりやすかったよ。
ムービーを見ていると、たしかに味のあるスポットが多いよね。セキュリティや街の人たちはどんな感じだったの? キックアウトされたりしなかった?
一度とある大学内のスポットで注意されたけど、俺らも4グループに分かれて周辺でいろいろ動きまくってたから、もうどうでも良くなっちゃったみたいで、結局はキックアウトされなかったな。とくに大きなトラブルはなく撮影できたから良かったよ。
Photo: Danny Kern
ブルガリアトリップでいちばん印象に残ったカットといえば? 誰のどんなトリック?
ヨーナスはいいトリックをたくさん決めてたけど、なかでもBs ウォールライドからのフリップアウトがアツかった。ジャスパーがクレイジーなレッジで決めたボードスライドもドープだったし、ニック・ダークスも普通ならやろうと思わないようなスケッチーなスポットでヤバい50-50を決めてた。みんなだいぶ乗れてたよ!
ヨーナスはDeath Labelでチームメイトでもあるけど、彼と一緒にやってみてどうだった?
めちゃくちゃ上手いし、スノーボーディングのすべてに対して論理的に考えながら行動しているライダーだね。滑るときも仕事が早いし、アイテムを仕込む作業もキッチリと真剣に取り組んでいるから、効率も良くていい感じに撮影ができる仲間だよ。ヤツはブルガリアに自分のパートを撮りに来て、完成させて帰って行った。自分に課したミッションを完璧に成し遂げていったね。
このブルガリアトリップで一番世話になった食べ物といえば?
正直に白状すると、ピザだね。どこに行ってもやっぱりピザは欠かせない(笑)。ピザにピクルスを乗っけるのがブルガリアスタイルみたいで、だいぶそれにハマってた。俺はそれがすっかり気に入っちゃってアメリカに帰ってきてからもそれが定番になったね。
ピザはいつでもどこでも美味いよね(笑)。人が生活している街なかで滑っているとその土地の文化を肌で感じると思うけど、ブルガリアのローカルカルチャーで印象に残ったことといえばなに?
みんな愛国心があって勤勉なことに驚いたよ! 単純にお金のためというわけじゃなく、とにかく真面目によく働いていて感心させられたよ。
撮影でさまざまな街に訪れていると思うけど、アンドリューにとってレールトリップの一番の魅力といえば?
俺は山にいるよりも、街にいるのが好きなんだ。もちろんパウダーも山も好きなんだけど、街にいるときのほうが自分にとってしっくりくる。だからストリートが好きなのかも。
Photo: Danny Kern
クルーでスポットに到着後、ほかのライダーに自分のやりたいトリックを先にメイクされたとする。アンドリューはそんなときどうする?
これはクルーで動くとたまにあることだけど、避けたい事態だね。俺があとにヒットするなら違うトリックをチョイスするかな。何度もこんな状況が起こるようなら、丁寧にクルーとコミュニケーションをとっていって、自分のやりたいトリックやラインについてもっと言っておいたほうがいいよね。
自分のやりたいトリックを決断してクルーと一緒に画を残すプロセスは、プロスノーボーダーにとって重要なスキルが問われるよね。いいカットを残すためにアンドリューはどんなことを意識している?
スノーボーダーはいつ、どんな場所でもクリエイティブでいるべきだと思うんだ。俺の場合はストリートシューティングでスポットに着いたら、まずは自分にとってベーシックなトリックからいくつか撮影して、そのあとにテクニカルだったりやったことのないトリックに挑戦する。それがいつもの流れかな。
スノーボーダーとしての自分のスタイルを言葉にしてみるとすれば?
シンプルなトリックをカッコよく。それが俺の目指すスタイル。
最後の質問。なぜアンドリューはスノーボーディングをストリートで表現している?
本当に自分らしくいられるからだと思う。バックカントリーみたいなシリアスさもないし、街で滑っているバイブスが好きなんだ。俺にとっては自分が何者なのかを伝えるのに一番いい方法さ。
Joonas Eloranta / ヨーナス・エロランタ
Photo: Danny Kern
ブルガリアのレールトリップはどうだった?
ブルガリアはすごく面白い場所だったよ。Stinky Socksのみんながアテンドしてくれたしね。訪れた場所の歴史を教えてもらったり、ブルガリアの伝統的なカルチャーにも触れることができたんだ。撮影ではライダーがまさかの30人くらいいて、セットアップの作業が超早くてそれがかなり助かってた(笑)。全員がそれぞれいいカットを残すために努力して、セッションもいつも盛り上がったよ!
4組に分かれて撮影したとは聞いてたけど、まさかの30人もいたんだね(笑)。ブルガリアのスポットや地形はどんな感じだった?
廃墟みたいな建物が多くて、アプローチに使える坂もたくさんあったからスポットは多かったよ。ステアはザラザラの粗いコンクリート、錆びたレールにゴツゴツのアスファルトみたいな場所が多くて、ブルガリアのスポットはだいぶワイルドな感じだったね(笑)。パーフェクトとは言えないけど、そこがいいところでもあるというか。整備の行き届いたクリーンな街よりも個性があって僕は気に入ったね。
スポットは相当荒っぽい感じだったんだね。セキュリティとか住民とのトラブルはなかった?
街の人たちは驚くほどストリートライディングに対してメローだったよ。一度だけ警察を呼ばれたことはあったけど、大きなトラブルにはならずに済んだし、時間をおいてスポットに戻ってやりたかったトリックもメイクできたしね。
スポットでのトラブルを防ぐために心がけていることとかある?
ストリートで滑るにあたって大事なのは、終わったら必ずキックを片付けること。通行人に行儀よくすることも忘れちゃいけない。当たり前だけどそれができないと、ネガティブなレッテルを貼られるのは自分らだし、ストリートで滑ることもこの先やりづらくなってしまうからね。
Photo: Danny Kern
このトリップでいちばん印象に残ったカットといえば? 誰のどんなトリック?
ジェイク・シュアイブルの屋根ドロップからのリフトのワイヤーへのボードスライドだね! 僕にはそんなライン見えてなかったから驚いたし、めちゃくちゃクリーンにメイクしてたんだ。しかもそれは今回のブルガリアシューティングの最終日の最後のトリックでさ。何日間もみんなで最高のセッションを重ねて、フッテージもたくさん残して、それをジェイクが最高のカタチで締めくくってくれたんだ。あの日のことは一生忘れないっていうくらい心に刻まれた1日だったね。
Death Labelでチームメイトのアンドリューと一緒に動いてみてどう思った?
アンドリューはモチベーションが高くてハードワーカーで、なにより撮影に対して超ポジティブなところが印象的だったな。もちろん昔からFinger on tha Triggerのビデオで彼の滑りを観ていたしね。しかもアンドリューは、ほかのライダーが全員極太のパンツだったのにひとりだけタイトパンツを履いててさ。今ではDeath LabelでもStinky Socksでも同じチームでこうして一緒に動けていることは最高なことだし、これからも一緒にやっていきたいね!
ブルガリアで一番世話になった食べ物といえば?
ニワトリの心臓とか、初めて食べるような動物のタンとか、ワイルドな食べ物にたくさんトライしたよ(笑)。いちばん気に入ったのはシャワルマっていうケバブみたいなラップサンドで、ヨーグルト一緒に食べるのがブルガリアンスタイル。美味くて安いし、だいぶ世話になったよ。
やっぱりそこはヨーグルトが登場するんだね(笑)。ストリートでの撮影以外で、ブルガリアのローカルスノーボーダーたちとセッションする機会はあったの?
Stinky Socksのデモをボロベッツというリゾートでやったんだ。僕らも彼らもお互いの滑りにアガって、かなり盛り上がったセッションになったよ。パークのセットアップもヤバかったし、いい思い出になったよ。
ストリート撮影をメインに活動しているヨーナスにとって、レールトリップの一番の好きなところは?
トリップはなにが起こるかわからないところ。なんにでもうまく対応していかなければならないよね。アテンドしてくれるスノーボーダーをあらかじめ見つけるとか、気候や天気を調べたり、過去のフッテージやGoogle Mapのストリートビューをチェックしてどんな場所なのかをイメージしたりして準備しておくんだ。とは言っても、想像したとおりのことよりも想定外のことの方が多いけどね(笑)。でもそれがトリップのいいところでもある。なりゆきで起こる出来事のほうが面白かったりするし、スポットもトリックもいつもとは違ったチョイスになるしね。
ヨーナスが住んでいるフィンランド・ヘルシンキはストリートレールのメッカみたいなところだよね。ヘルシンキにいればストリートのフッテージは撮れると思うけど、やっぱりトリップにも頻繁に出るんだね。
そうだね。ヘルシンキだったらスポットも多いし、誰がどこでどんなトリックを残したとか、自分だったらあのスポットであれがやりたいとか、すべて頭のなかに入ってる。だから撮影時間のロスも少ないし、映像も多く撮れるのはたしかだね。でもそれは、いいところでもあり退屈でもあると思うんだ。いい仲間とどこかへトリップに出て、いい時間を過ごすというのはなによりも最高なことだしね。
撮影中、ほかのライダーに自分のやりたいトリックとまったく同じのを先にメイクされたとしたら、ヨーナスはどうする?
それは避けたい事態だね。同じスポットでもレギュラーとグーフィーのライダーで行けば、トリックチョイスも変わってくるから調子いいけどね。
ほかのライダーと撮影するときに大事なのは、自分がなにがしたいのかみんなにしっかりと意思表示して、それを伝えたときのみんなの反応も見ること。しっかりとコミュニケーションがとれていればトリックがカブることも少ないと思うよ。
それは普段の生活でも言えることかもね。スポットの選び方でセオリーみたいなものはある?
考えすぎないで、自然体でいること。十分にスピードがとれるアプローチがない場合、ナチュラルなランディングがあればOK。その方が仕込みの時間も短縮できるし、雪盛って人工的に作りましたっていう感は、なるべくないほうがいいからね。あとは、なるべくラインで撮れる場所を探しているね。スタント系の一発ヒットのカットよりも、ラインで2トリック以上いれたほうがクールでしょ? スポットはつねに新しい場所を探しているけど、すでにほかのライダーにやられているスポットでも斬新だったり、なにか面白いことができればいいと思う。自分がそこでやりたいからやる。って気持ちが一番大切。
Photo: Danny Kern
いいスポットを見つけるヨーナス流の秘訣ってあるの?
車や自転車で街に出て自分の足で探すことが大事だね。僕の場合は街の郊外にある丘のあるエリアや公園を探す。しっかりと探せば、スポットはどこにでもいくらでもあるんだ。
スノーボーダーとしての自分のスタイルを言葉にしてみるとすれば?
僕はすべてのトリックや動きをプロパーにやっていくのを心がけているよ。
最後の質問。なぜヨーナスは自分のスノーボーディングをストリートパートとして表現しているの?
ビデオパートを作ることは、ミュージシャンにとってアルバムを作ることと一緒だと思う。すべては自分の頭のなかのアイデアから始まって、自分のすべてをそこに捧げて、上手くいくときもあればコケまくってヘコむときもある。そんな過程を経て作り上げたパートはオーディエンスに見てもらうためにやっているのはもちろんだけど、自分のためでもあるんだ。作ったパートは一生残るものだしね。そして次の冬が来たらまた新しいアイデアを取り入れて、撮影を始める。前回のパートよりももっといいパートを作るためにね。まだまだ自分のベストワークと言い切れるパートはできてないんだけど、毎年レベルアップしているとは思ってる。レベルアップしていなければ、プロライダーとしてやってる意味はないからね。
こうして撮影して、自分のパートをリリースすることができるのもまわりのサポートのおかげだよ。みんないつもありがとう!
Photo: Danny Kern
Stinky Socks Team Movie 『Stinky Movie』 Teaser
1987年6月17日、アメリカ・南カリフォルニア生まれ。2000年代のジブシーンを牽引したFinger on the Triggerプロダクションなどでオリジナリティ溢れる風貌と滑りで強いインパクトを与え、今もなお第一線で活躍し続けるストリートジバー。シンプルなアクションをスタイリッシュに魅せることができる数少ないライダーのひとり。
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1989年5月24日生まれ、フィンランド出身。ヨーロッパ屈指のストリートクルー、Postland Theoryや世界各国のアップカマーが集うSnack Breakクルーなど、さまざまなムービープロジェクトでフッテージを量産するアップカマー。正統派トリックからクリエイティブラインまで幅広く対応するライディングは一見の価値あり。
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