EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

wakuwaku スノーボード ムービー 映像

表現の次元上昇。WAKUWAKUの最新作“ASCENSION MIX”フルムービー&インタビュー

日本国内のストリートを舞台に活動するフィルムクルー、WAKUWAKUが2作目“Ascension Mix”をリリース。
長野県をベースとしながらも全国各地に撮影トリップに繰り出し、多種多様なスポットでのライディングをオリジナリティ溢れる手法で表現する本作品の映像公開とともに、コアメンバーの荒川優希、五十嵐顕司、野坂賢造へのインタビューをお届け。

Cover Photo by Photography樹, Interview and text by Masaki Kitae / Epic Snowboarding Magazine

 

WAKUWAKU “Ascension Mix”

Feature: Kenji Igarashi, Yuki Arakawa, Taisuke Ban, Yuya Suzuki, Kenzo Nosaka, Ryota Enomoto, Shikaru Wada
Film: WAKUWAKU
Additional Film: Toru Ishiyama, Shikaru Wada, Tenmoku Tsubasa, Goofies
Edit: Yuki Arakawa
Music: Keita Yamazaki (HACHI crew)
Scratch: DJ FC

 

ライダーが自らビデオカメラを回し、編集し制作活動を行うWAKUWAKUクルー。2020-21シーズンにリリースした“Ascension Please”に続くリリースとなる最新作の“Ascension Mix”は、相変わらずのD.I.Y.精神と攻めの姿勢、トリックやラインのチョイスなど、あらゆる面で前作を上回る表現の幅で魅せる。それに加え、サウンドトラックはプロスノーボーダーとミュージシャン、ふたつの顔をもつ山崎恵太が全曲プロデュースし、WAKUWAKUの世界観をサウンドで表現したオリジナリティに満ちた作品となっている。

 

ワクワクすることを追い求めたストリートでの表現

 

 

wakuwaku スノーボード snowboarding

The moment of clip high. 積み重ねてきたアクションがカタチになる瞬間
Photo: Photography樹
 

 

 

suzuki yuya 鈴木裕也 スノーボード snowboarding

安定感のある柔らかいスタイルで魅せる鈴木裕也は、本ムービーのトリを飾るライディングを残した
Photo: Photography樹
 

 

 

スノーボード snowboarding taisuke ban 伴 泰介

クリエイティビティ全開の独自性溢れるフッテージで、少なめのカットながら存在感を残した伴 泰介
Photo: Mantaroh Muramoto
 

 

“ワクワクすること・モノを追いかける”。極限にシンプルかつ核心をつくコンセプトを掲げるWAKUWAKUは、荒川優希、五十嵐顕司、野坂賢造、伴 泰介、鈴木裕也、5名のメンバーからなるフィルムクルー。それぞれ違った地元で育ちながらも、カナダ・ウィスラーや日本の白馬、スノーヴァ羽島など、いくつかの場所で有機的に繋がったコネクションとパッションがクルーとなり、彼らの創作活動がスタートした。そして、3作目の制作が始まる今季2021-22シーズンからは優希、顕司、賢造の3名での活動となり、彼らにとって新しい体制で迎える撮影シーズンとなる。本作にも登場する伴 泰介は、より自身にフィットするライフスタイルを求めて屋久島へ移住。また、サーフィン熱が高まった鈴木裕也はスノーボーダーとしての撮影活動にブレイクをとり、よりサーフィンに打ち込める環境に身を置いている。このふたりの環境の変化は、スノーボーディングに背を向けることを優先したのではなく、今の自分がもっともワクワクすることに純粋に向き合うというクルー全員が共有し続けるマインドに通じる決断といえる。

 

 

wakuwaku 試写会

各地からスノーボーダーが集った今年12月に行われた白馬試写会では、出演ライダー5名が集結。
スノーボードと長野の音楽シーンをクロスオーバーさせたパーティは、WAKUWAKUが触れ合ってきたカルチャーを表現した夜となった

 

ここからは今冬も引き続き撮影活動に向き合うメンバーのインタビューとともに、WAKUWAKUの世界観を感じ取ってもらいたい。彼らの言葉を受け止めてからフッテージをチェックすれば、より深くムービー全体を楽しめるはずだ。

 

 

荒川優希 yuki arakawa snowboarding スノーボード

Photo: Mantaroh Muramoto

荒川優希 / YUKI ARAKAWA

 

 

クルーに入った経緯
2019年ごろにケンジ(五十嵐顕司)とバンちゃん(伴 泰介)がスノーヴァ羽島の近くに住んでて、遊びに行ったときです。俺はカナダから帰ってきたばかりで“自分が納得できるスノーボードビデオを作りたい”って思っているときでした。WAKUWAKUの話を聞いて、俺もやりたいってなりました。

“WAKUWAKU”の意義
自分の“本当の”やりたいこと、楽しみたいこと、成し遂げたいこと。生きているうちにどこまでできるか? それが人の心も動かす大きなエネルギー。

今作のタイトルについて
個々のフッテージをミックスした作品で、音楽はケイタ君(山崎恵太)に作ってもらって踊りたいね、って話から“MIX”という言葉が出ました。Ascensionは前作から“次元の上昇”って意味で使ってて、WAKUWAKUの最初のテーマでもあるので、それを合わせて“Ascension Mix”になりました。

今作のコンセプト
昨年と違ってフルメンバーで撮影できなかったり、個々でやりたい滑りがあったりしたので、それを尊重しました。みんなの個性が出てる作品になったのかなと思います。映像のWAKUWAKUマインドをケイタ君に音で表現してもらって、最高の作品になりました。

 

荒川優希 yuki arakawa snowboarding スノーボード


Photo: Photography樹
 

 

「男心ですかね、カッコイイと思えるから。なにかと戦っている姿が好きなんですよね」

 

さまざまなフィールドがあるなかで、ストリートを選択している理由
ストリートのビデオが好きだからですね。男心ですかね、カッコイイと思えるから。なにかと戦っている姿が好きなんですよね。それを自分たちで作って見てもらえるって最高です。

スポットやラインのチョイスで心がけていること
ストリートでいちばんミソなのがアプローチスピードで、スピード足りる? をまずいちばん気にします。そのスピードをナチュラルスピードなのか、発射台か、メインかスイッチか、どこまで深くイメージするかが大事だと思います。

ストリートでのフェイバリットトリックと、そのトリックをやるときのこだわり
トリックではないけど、“イケる”と思ったらとことんやりますね。僕はどっちかというと気合系なんで。イメージがあるうちは何本でもやります。時間かかるときはすみません。

撮影アングルを決めるときの法則や考え方
メイク前メイク後、表情がわかるように心がけています。アイテムとトリックが映える角度で。フィッシュアングルはスケートのビデオで勉強。

キックアウトを避ける方法や裏技はありますか?
直接許可をもらいにいったり、撮影しているときは挨拶をかかさずしたり。なにより嘘つかないのが裏技ですね。正直にワクワクしながら話してたら、応援してくれる人ばっかりです。地球規模で考えたら世の中にある人工物はみんな勝手なものばかりだから、それで自分たちのやりかたで遊んで新しいモノを生み出すことはクリエイティブなことだと思っています。もちろん限度はあるし、壊したくはないです。レールや壁の塗装剥がれははいつか、WAKUWAKU Tripで塗りにいきたいです。

これまでの撮影のなかで印象深いエピソード
武田さん家レールですね。表札を越えてランディングするスポットで、ケンジとケンゾー(野坂賢造)が許可もらってきたんすけど、武田さんが見てるそばで、ケンゾーが思い切りぶっ壊して(笑)。しかも時間足らなかったから2日目も行って、ふたりは菓子折持って謝って、もう1回やらしてもらってました。マジで自由なクルーです。そのときのフッテージは“Ascension Mix”で観てください。

クルーでやり続けることの意味やいいところ
一緒にやりたい事で表現できていて、最高な環境をありがとう。って言いたいですね。それをどこまで続けられるか、いや続けていきたいですね。ひとりでできないことが、仲間がいて実現できているから。バンちゃんは屋久島住んでたり、ユウヤ(鈴木裕也)はサーフィンしてたりでみんな自由だけど、WAKUWAKUの土台をしっかり作って、いつでもクルーを迎えたいですね。

表現したいことや活動内容など、今後の展望
カッコ良いスノーボードを表現していくために、よりDeepに、奥に、知識も技術も広げて、新しいモノを作っていきたいと思います。自分たちが楽しむだけでなく、スノーボードシーンを盛り上げて、WAKUWAKUした世界に。今はストリートで表現しているけど、表現するフィールドも広げていきたいです。来年の作品も期待せずにお待ちください。

 

 

五十嵐顕司 kenji igarashi snowboarding スノーボード

Photo: Photography樹

五十嵐 顕司 / KENJI IGARASHI

 

クルーを結成した経緯
自分にとってスノーボードは生き甲斐であり、ワクワクするもの。スノーヴァ羽島に篭ってるときに日常生活できついことがあったけど、そこでスノーボードにほんとに助けられた。そのスノーボードでWAKUWAKUバイブスを本気で表現したいと思って、結成しました。

“WAKUWAKU”の意義
理想のイメージへの原動力、エネルギー。

ストリートを選択している理由
シンプルにカッコいい。Youtubeとかで見てる映像でも一番見ちゃいますね。山にも最近興味が出てきましたけど、一番自分を表現したいのは今はストリートなんだと思います。

スポットやラインのチョイスで心がけていること
入り込みやすい性格なので、なるべく客観的に一歩引いてみて、いい絵になるかは結構意識してます。

ストリートでのフェイバリットトリックと、そのトリックをやるときのこだわり
バックリップ。空中で合わせる。

撮影アングルを決めるときの法則や考え方
スケートの映像の撮り方を参考にして、試行錯誤してます!

キックアウトを避ける方法や裏技
挨拶、コミュニケーション。結構こっちから挨拶すればいい人ばっかりですよ。

これまでの撮影のなかで印象深いエピソード
トリップの帰り道に稼働中、除雪車にスピンインして初事故メイク!

 

五十嵐顕司 kenji igarashi snowboarding スノーボード


Photo: Mantaroh Muramoto
 

 

「自分らのスノーボード、表現していく映像をさらに深く追及していきたい」

 

クルーでやり続けることの意味やいいところ
ひとつの映像を仲間と本気で作れるってそれだけで最高ですよね。貴重な今しかない時間です。メイクしたときも喜びを共有できたり、問題もみんなで解決していって、そういうのも含めてシーズン動いて出来上がる映像を見たときは、クルー最高だなーといつも思いますね。

表現したいことや活動内容など、今後の展望
WAKUWAKUっていうのは、俺のなかではスノーボードフィルムクルーです。みんなが表現したい限り、続いていくと思います。そしてムービータイトルにも使っている“Ascension(次元上昇)”を意識して、自分らのスノーボード、それを表現していく映像をさらに深く追及していきたいと思ってます。

 

 

野坂賢造 kenzo nagasaka snowboarding スノーボード

Photo: Photography樹

野坂賢造 / Kenzo Nosaka

 

 

クルーに入った経緯
今から6年前のこと。カナダ・ウィスラーでその自然やカルチャーに吹っ飛ばされながら時間を過ごした。滑り倒して、乾杯して。キャンプに行ったり、音に揺られて踊ったり。そんな時期に短い時間だったけれど、引き寄せられたのか、関わりを持ったのが今のWAKUWAKUクルー。それぞれが日本に帰ってからは会うこともなくなったが、それから4、5年が経った2019年夏。ケンジ(五十嵐顕司)とバンちゃん(伴 泰介)とふと電話していたとき「やっぱワクワクだったわ」とケンジがひとこと。生きてゆくなかでシステムに飲み込まれ、目的地を見失うこともあるこんな世の中。だからこそ自分たちがワクワクすることをやろう、そして誰かがワクワクすることをしようと話をしたのがはじまり。そうしてその冬、ひとつの映像を作ろうと長野県白馬に集まることを決めた。

“WAKUWAKU”の意義
指針。どこに向かうかを明確にしてくれるもの。またそこに向かうためのエネルギー源。ワクワクする選択を。シンプル。

タイトルに込めた意味
次元を上昇していこうというシンプルなメッセージ。自分を高めてゆくというプロセスのなかで、より周りを巻き込みながら、織り交ぜながら、みんなで上昇して行こうって段階に入ったのが今作“Ascension Mix”の意味。

ストリートを選択している理由
ストリートにこだわっているわけではなく、フィールドは無限っていつも感じる。バックカントリーからグラトリまであっていい。どれも違うところがあって、似たところもある。その“幅”みたいのを楽しみたい。ストリートは、気楽に仲間たちと言葉を交わしながら、みんなでその空間を作るってスタイルが好き。どこかストリートスケートカルチャーのようで。アンダーグラウンドで、黒いダークなイメージが入った感じにも惹かれる。

 

野坂賢造 kenzo nagasaka snowboarding スノーボード


Photo: Photography樹
 

 

「固定概念を取っ払って、自由な発想を大切にしてる」

 

スポットやラインのチョイスで心がけていること
ストリートであれば、そのスポットを見たときに自然とイメージが浮かぶか。その周りも見てほかのラインはあるか。いくつかの選択肢からやりたいことを選択する。同じスポットでも、見せかたひとつで“よく見るやつ”にもなるし“新鮮なもの”にもなる。固定概念を取っ払って、自由な発想を大切にしてる。あとはパーツではなくて、全体の絵としてどうなのかってところも大切にしている。

ストリートでのフェイバリットトリックと、そのトリックをやるときのこだわり
出来ることやるのが背一杯かな(笑)。ただ無理のない自然な動きが好きだから、なるべくそこに近づけようとはする。

撮影アングルを決めるときの法則や考え方
スピード感やレールを擦る生々しい音、ライダーの表情や心境、その瞬間に魅せる自然や光の美しさだったり捉えることが出来るアングルを探してる。

キックアウトを避ける方法や裏技
ナイスであること。素直であること。ルールや価値観の違いもあるけど、まずは相手を受け入れること。それを持って、自分たちのしていることを伝えること。どうであれリスペクトを忘れないこと。

これまでの撮影のなかでいちばん印象深いエピソード
アラちゃん(荒川優希)のストリートで打ったダブルバックフリップ。三角屋根型の建造物で、かち上げリップだからフリップし放題だね、なんて話をしていて。今日もそろそろかなって終盤にいきなし「ダブルやるわ」って本気顔してたのを覚えている。坊主頭にゴーグルだけして、アプローチ上がってゆく姿をみながら「こういうの待ってました」ってワクワクしてたな。最終的には1回転半弱しか回らなくて「ちょっと待って(笑)」とイメージと全然違ったって顔してたアラちゃんは最高に笑えた。型にハマらず、ちょっと豪快なのが好きだぁ~。

クルーでやり続けることの意味やいいところ
みんな鏡のようで、自分をまんま映してくれる存在。そのなかでもより見やすく映してくる人たちがいて、WAKUWAKUのみんなはそうだと思う。どこか心地良くない空気を感じたときは、自分がなにか大切なことを忘れていることを知らせてくれたり。クルー全体として調和を取ることは視野を広げてくれたり、我に夢中になっている自分を冷静にさせてくれたり。意見の違いや、ちょっとした不協和音のお陰で気づきを与えてくれて、感謝を感じる。

表現したいことや活動内容など、今後の展望
まだまだ面白いものを作れる。今作の映像を見ても、心のどこかにモヤモヤを感じる。まだまだこんなもんじゃない。自分のなかに広がる膨大なイメージを形にするには、いろんな要素が集結する必要があって、それをたった今も集めているところ。もっと面白いものがこの宇宙に放たれる。その瞬間を目の当たりにすることを楽しみにしてる。この冬はナチュラルヒットも撮りに行けるような一眼レフカメラをゲットする予定。ストリートから、よりナチュラルな世界にも入って行きたいし、クリフも飛びたいし、スプレーや快楽に包まれたターンのカットも撮りたい。その先にはスノーボードという枠を越えて、ひとつの作品を創れたらと思っている。スノーボードをしていない時間にもやっていることは沢山あって。日常のなかに震えることや、心を満たされる瞬間、衝撃的な出来事、いろいろ起こる。それが色になる。織り交ぜながら表現(作品)をひとつに形にし、それを目の当たりにできる日を楽しみにしてる。

 

IG:@waku_waku_419