EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

山根俊樹 Toshiki Yamane

山根俊樹 / TOSHIKI YAMANE「自分の限界越えた瞬間がめちゃくちゃ楽しい」

ビッグエアコンテストでその存在感を知らしめたのち、今ではヨーロッパをはじめとするグローバルシーンで活躍する山根俊樹。シグネチャーボードやフルパートのリリースなど、国内シーンを飛び越えて世界のフィールドで活躍するフタナリを名乗るひととなりを探る。

 

Photos by Atwosee, Tom Ganor. Interview by Epic Snowboarding Magazine.
Special Thanks: Mind Squad Distribution.

 

 天才肌と言われる人物には上っ面だけじゃない理由がある。努力で培われるスキルのほかに、生きてきた経験で培ったセンスや経験はもちろん、柔軟でポジティブな思考、身体能力、その理由はいくつかある。山根俊樹と過ごし、すぐに気付いたその理由は、間違いなく偽りのないピュアなパッションだった。つねにエネルギッシュでポジティブバイブスの彼と一度過ごせば、滑りはもちろんその人格にも魅了されるだろう。
 Bataleon Snowboardsから公開されたフルパートを軸に俊樹の熱い想いを探るインタビュー。

 

 

toshiki yamane 山根俊樹

何気ないセクションでシンプルを色付けるスタイル
Photo: Atwosee

 

 

フルパートリリースおめでとう。俊樹らしさが全開で良かったね。
ありがとうございます。なんかいい感じに仕上がってくれてて。「気合満点でなんか頑固っぽさが凄い出てるわ」って、みんな言ってくれるから、そこまで感じてくれてるんだなぁって思って。この感覚を更新していきたいですね。

撮影の動きはどんな感じだったの? 
最初はギアの紹介動画を撮りたいからやってくれって言われて、撮影をやってたんですよね。その撮影が案外早いこと終わって、「トシキ、日にちあるけどどうする? イーサン・モーガンと一緒に動けば?」 って言ってくれたことがきっかけで、今回のパート撮影が頭に浮かんだんですよね。パートは出そうとは思ってたんですけど、ここまで形になる話はしてなかったから、イーサンたちと動けば、間違いない映像が撮れるなみたいな。

 

 

山根俊樹 Toshiki Yamane

Bataleonから公開された俊樹のオンラインパート “Toshiki Death – Fight For Liberty”

 

 

ヨーロッパの撮影はどこで動いてたの?
オーストリアのインスブルックで、イーサンたちとは3週間ぐらい一緒にいたのかな。本当にヨーロッパって感じの町で、パーティに行ったらスノーボーダーが意外と多くって、スノーボーダーとスキーヤーが溢れてる感じの町ですね。北と南の両サイドに山があって、その中心にインスブルックがある。

バックカントリーのフッテージとかはインスブルック近くで撮影してたんだね。
イーサンがスポットをいっぱい知ってるから、俺はジャンプやりたいとこを見つけて、基本的には一緒にやってたっす。ライン系でハイクするってなったら自分でライン探して。ラインはやっぱり自己主張が凄く出るから面白いなって思いながらやってたっす。アテンドされてばっかりだったら、なんか俺自身、力を発揮してないなみたいな感じがするんですよ。

日本での撮影と海外での撮影でギャップを感じたり、なにか感じたことはある?
うーん。1番強いイメージはリップの形っすかね。ある程度アプローチを確保しないととか、まだパークっぽいジャンプをしようとしてるっていうのが、日本のなかでの俺たちの動きにはあって。俺たちがデカいキッカーを作って撮影するってなったら2~3日かけて作ったりするんですけど、1日でそのサイズを作ったりする。これじゃあリップ鬼上げじゃん! ってなっても、抜けを押さえればいいじゃん! ってな感じで。「あ、なるほどね(笑)」みたいな。とにかくキッカーのリップが鬼上げで、360やったら多分余裕でダブル行くみたいなキッカーがいっぱいで。

俊樹のパートのジャンプ、見るとたしかにね。
俺が540くらいしかやってないときも、ガンガンCabダブルとかやってるヤツもいたし。やっぱりめちゃくちゃ刺激的だなって。やっぱりデカいキッカーでデカいトリックやるってなったら、そのぶんアプローチ作りも時間かけてたんですけど、こっちではこんなサイズだったら1日でいいっしょ。みたいなところが、いきついてんなーみたいな。

なるほどね。面白いね。
そのへんは全然違って面白かったっすね。逆にイーサンと一緒に撮影してて思ったのが、モチベーションとかが俺と凄い似ていて、例えば、撮影中にちょっと背中を押して欲しいみたいなもときもあったりするじゃないすか? 「俺緊張してるぞ。大丈夫か? これいけんのか?」 みたいになったりするから(笑)。そういうときにそれこそトラビス・ライスとかジョン・ジャクソンとかの名前を出したりして、アイツらこの頂点でやってるから、「俺らはこれを超えなきゃいけねぇ」とか言ってモチベーションを上げ合うみたいな。そういうの冗談を言い合ったり。家に帰ったら疲れててキツいけどみんなでミーティングしながら明日のこと考えて、明日に向けて今日を過ごすっていう部分はあるから。そのへんの共通意識がまったく一緒でした。凄くいい温度感で、撮影ができたっすね。

俊樹はパート取り組むときにはしっかり考えて動くタイプ?
そうっすね。例えばトリックに関してパートは技を散らしたほうが、見てるほうは面白いだろうし、トリックを残したらよほどのことじゃないと出したトリックは出さないって決めてる感じ。ただ、ビビって、これベーシックしかいけないってときしか、ベーシックは出さないみたいな。どんどん消去法みたいな感じで頭ん中でパートのイメージを作れるだけ作ってやってるって感じ。

パートではバックカントリーにストリート、パーク、全部やってたけど、ビデオパートを作るときの理想のパート構成っていうのイメージはあるの?
なにかに特化してるライダーが多いから、俺は全部やりたいと思ってて、だからオールラウンドの板で、板一本でどれだけ幅広くできんのかっていうのが自分のなかの1番のこだわりなのかな? って思ってる。

撮影をしていくなかで意識してることはどんなこと?
やっぱり同じロケーションで誰かがトリックやったってなったらそれを超えるトリックを絶対にやるっすね。もちろん知らなかったらそれはもういいかなとか思うっすけど、まぁでも、そのときに自分がこうしたいなって思ったらそれをやって、メイクしたらじゃあそれもう1個上行こうよっていう撮影をやっぱ日々こなしていきたいなって思いながらやってるっす。先輩たちが開拓してきてて、なのにお前らそれを下回っててどうすんだよ? って言われたくないから。やっぱりやるんだったらそれ超えるのが尊敬の証なのかなっていう。

 

 

toshiki yamane 山根俊樹

ナチュラル、ストリート、パーク、俊樹のスタイルはいつでも全開
Photo: Atwosee

 

1日でも早く世界に出れるような状況を作っていきたい

 

 

Bataleonのチームにはどういう経緯で入ったの?
Bataleonクルーがキロロに撮影しに来てて、少し一緒に動くことになったんですけど、撮影は別だからみたいな感じで言われてたんだけど、一緒に滑るタイミングがあって、そのときにBataleonのダニー(クリエイティブディレクター)が「お前めちゃくちゃいいヤツだな。グッドスタイル。」って言ってくれて。何気なしにその日の1日を終えて帰ってたんすよ、そしたらツルさん(鶴ヶ崎義徳)から連絡来て、「俊樹、お前を欲しがってるぞ!」みたいなこと言われて。当時はサポートしてくれるブランドもあったし、いきなり来いっていわれても考えもんだなってことで、1~2週間考えさせてくれっていったら、「シグネイチャーの板を出して、チームで撮影することをお前にプレゼントするから、来たいんだったら海外に来い。お前がやりたいことを今シーズンからやらしてやるよ、来年じゃなく今シーズンから」って言われて。

すげぇ話だね。熱い。
うわぁ、なんだこの招待みたいな。これ行かねばならねぇ気がするなぁみたいな。でもサポートしてくれているブランドに恩恵が凄く強かったから、無責任でいくのは筋違いだなって考えがあったんですよね。それを中井君(孝治)に相談したら、中井君が「ライダーとかの考えじゃなくて、1回俊樹がどうしたいかっていうのを明確にして、今の俊樹がどうしたいのか考えてみな。海外行きたいんじゃないの?」って言ってくれて。1日でも早く世界に出れるような状況を作っていきたいと思って生きてきたから。

さすが、兄貴肌の中井君だね。
めちゃくちゃ背中を押してくれて、「フラットに考えなよ」っていってくれてから、考えが前向きになったんですよね。お世話になっていたブランドに相談したら、「背中を押すよ」って言ってくれて。Bataleonとは縁なのかなと思ってます。

 

 

山根俊樹 Toshiki Yamane

このリッピング写真から溢れるほどの躍動感は、つねに勢いを感じさせてくれる俊樹を象徴する1枚。
アブソルートパークでのBataleon Snowboardsシューティング
Photo: Tom

 

 

自分で掴んだ縁だしね。
自分からメーカーに挨拶しに行って、自分から売り出して行くことよりも山で出会ってこう縁を獲得できたって感じだったから、感謝しかないって感じっす。

単身でヨーロッパに行ってるから、熱いなぁって思ってたけどそんなストーリーがあったんだね。
海外に来ればカメラマンだったりフィルミングだったり、サポートするぞって言ってくれて、俺はもう単身で行って良いんだっていう覚悟ができたんすよね。Bataleonチームのマインドは、マイペースなところはみんなあるし、プレッシャーなしで、とにかくやりたいことをやらせるっていうのが、マネージャーとかダニーの意思だから、とにかく楽しめみたいな! みたいな考えでサポートしてくれる。

最高の環境だね。
単純にライダーたちが、やりたいんだったらやれよ! 俺らはサポートする感じで動いてるっていう。だから、トア・ランドストロームは、Byond Medalsで前線でやってるし、イーサンもドキュメンタリー作品をやりたいって、いろんなヤツを巻き込んで動いたり、それぞれのビジョンをしっかり実現してますね。それと毎年に1回は、必ずチームシューティングをやろうなみたいな。ファミリー感がめちゃ熱いっす。正直、中身を覗くまで、外聞きの噂でハードコアだよね。っていう感じで聞いてたけど、ガッツリ向き合って中身を見ると、コイツらハードコアだなって思った。

ライダーを尊重してくれる、現場主義な考えなんだね。
現場主義っすね。

Bataleonの3BTの板って調子いいの? どんな板?
反応が早いですね。ターンの荷重の入りがめちゃくちゃスムーズ。足の裏から感じながら、めちゃくちゃスムーズにコントロールできるっていう板っすよ。キッカー入るとき、パウダーラン、めちゃくちゃ調子いいっすね。

3BTの板、気になるね。
俺のシグネイチャーは151cmと154cmのツインなんですけど、151cmがストリートとジブ用にしてて。でも基本的には154cmで全部やってるっすね。99%ツインなんですけど、俺は2~3cmセットバック入れたり。で前足はちょっと開いてちょいレギュラー取る感じがめちゃくちゃオススメっす。

 

 

toshiki yamane 山根俊樹

ベーシックなトリックから、270out、スイッチまでトリックを量産
Photo: Atwosee

 

 

自分の限界越えた瞬間がめちゃくちゃ楽しい

 

 

そういえばフタナリって名乗ってるけど?
はい、あれはめちゃくちゃブラックジョークっす (笑)。童貞を捨てる前のある日にセックスする夢を見て、セックスしたあとにまったく同じ感覚だったから、あっ夢と感覚一緒だって気づいたんすよね。そっから夢を探ってったらたまに女の子になってる夢があるんすよ。それで、あ、女の子ってこういう感覚なんだみたいななって。まぁゲイとかバイって扉をひらかずにその感覚知ってるよっていう意味でフタナリにしようって思って。両性の考えがわかるっていうか、それでふざけてフタナリにしてやろうみたいな。ここまで言えるヤツいないでしょみたいな。

そうだったんだね。北海道に生活のベースを移した理由を聞かせて。
簡単に言うと北海道にリアルを感じたっていうのは、間違いなく理由のひとつっすね。雪質も海外ライダーが来るぐらい良い。今になって言えるんすけど、やっぱり北海道の雪質が一番いいんすよね。やっぱり、あの軽さの雪は日本にしかないんじゃないかな? 質感もやっぱ違うし、重さも全然違う。やっぱりこれが俺は一番好きだなって思ったのと、北海道にはカッコいいライダーがいるからっていうのがありましたね。中井君(孝治)とかカズ君(國母)とか、トップと思ってるライダーが北海道っていうのもあって、関東、白馬と北海道、どれかを選ぶってなったときに、俺は北海道だなって。で、もっと掘り下げるとBlue Hearbの「とにかく北へ向かえ」っていうメッセージが(笑)。

 

toshiki yamane 山根俊樹

 

Fight for Libertyはどんなきっかけで、はじめたの?
最初に立ち上げたの何年だろう? たぶん20歳くらいのときなんすよね。俺、不良漫画とか暴走族とかめっちゃ好きなんですよね。仲良しごっこしない、そういう仲間が欲しいなみたいな。「お前やれんのかよ、これから世界に向かってやってく気あんのかよ。」みたいなヤツらと一緒にやっていきたいなって考えて。プラス自分に打ち勝つ言葉を作りたいって考えて、じゃあチームじゃなくてメッセージにしようって。共通のメッセージでみんなで力を合わせてやろうみたいな考えがそれでしたね。

なるほどね。それで今のメンツになったんだね。
賛否両論って言うんすかね。絶対的な偏りだったり批評と反批評ていうものがあるじゃないですか? 賛否両論っていうのに俺は凄い苦しんで、なんでこう批判されることを無視してまで胸張らないといけないんだって思ったんですよね。賛否両論を黙らせる言葉を考えればいいんだって思って、そしたらFight for Libertyってなったんですよ。否定に対しても、いやこれは俺たちの自由だって言える部分があって、肯定する部分であっても俺たちは自由にやってるそこの本質は何なんだろうっていう部分が探れると思うから、プラスとマイナスにどっちにでも傾けれる言葉っていうのが俺のなかで最強だって思ったんすよね。唯一自分が胸張って言える言葉ってなったら、Fight for Libertyっていう。それから自分のなかでコイツらとやっていきてぇってヤツ探してみようってなったのが大介(渡辺)と耀亮(秋山)と健太郎君(松田)でみたいな。

 

 

Fight For Liberty – “ContiNew”

 

 

これからどういうスノーボーディングをやっていきたいのかって考えたりする?
こうしないといけないっていう概念に、「それだけじゃないんだよ。っ」て言える存在になりたいです。今の若い子たちってコンペで頑張っていくと思うんすよ、JSBAやFISに出たり。そこでプロ資格取って、そのあとに自分がどうしていくかみたいな感じがあると思うんすけど、俺が見てて思うのは、いや、その時点から自分はもう選択していいんだっていう自由を与えたいなって思ったんですよね。

なるほどね。
プロになりたいからJSBAに出ます、プロになりたいからスポンサーにお願いしてサポートを受けますじゃなくて、最初から自分がスノーボードが好きだ、だから行動をしようっていうことで間違いじゃないって思うんすよね。それを貫いてたらメーカーが絶対サポートに来てくれるんすよ。そこはもう自分がどれだけスノーボード好きかっていう努力で変わってくると思うんすよね、努力と意識で。それを俺自身で証明していきたいなとは思いますね。

ありがとう。最後に言いたいことやメッセージなどあれば。
ありがとうございました。 結構日常から感情が煮えたぎって、たまにうわっ、ドコにぶつけよう? みたいなときもある。最近ここ数年で気づいたんすけど、楽しいのが楽しいって感じじゃないんですよね。みんなと一緒にいて楽しいスノーボードは、それは楽しいの当たり前なんすよ。そのうえで自分がなにかをひらめいたり、俺、いま完全に自分超えたよね。みたいな。自分の限界越えた瞬間がめちゃくちゃ楽しいって。 でその瞬間はやっぱり夢中だから、そういう感情まったくないんすけど、家に帰ってる途中とかに、今日俺あそこまでやってたわみたいな。めちゃくちゃ楽しかったなみたいな! って気づいて、あ、俺本気の瞬間が好きなんだって気づいたからもうこれでやっていこうみたいな感じっす。やっぱり横乗りが1番本気になれるっていうのがあるから。

 

 

toshiki yamane 山根俊樹

スノーボーダーとしてカテゴリに囚われない、オールラウンダーとして在り方にこだわりを持つ俊樹。これからの動向とさらなる進化が楽しみでならない
Photo: Atwosee

 

 

 

 

山根俊樹 Toshiki Yamane
山根俊樹 / Toshiki Yamane
1993年7月10日、福岡県生まれ、北海道在住。溢れるパッションからなる生命力溢れるスタイリッシュな滑りで国内のみならず世界から注目を集めるフリースタイラー。自由の表現者、Fight for Libertyの中心人物として、映像作品のリリースを手がける。その強力なエネルギーで国内シーンの中枢を担う、決して人に流されることない根っからの九州男児。

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Instagram: @toshikideath@fightforliberty_ffl