EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

toshitaka-nakamura 中村俊啓

INTERVIEW – 中村俊啓「乗れば乗るだけ上手くなっていく。飽きない遊び」

山岳大国である日本でも有数のピークが並ぶ立山連峰。その麓で生まれ育ち、1年を通して山と向きあうスノーボーダー、中村俊啓。
パイプやパークに没頭した時期を経て、アルパインスノーボーディングのフィールドで活躍することとなったスノーボーダーのマインドを立山で聞いた。 

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toshitaka nakamura 中村俊啓

Photo: Shin Otsuka

 

1年を通して、山でどれくらいの時間を過ごしている?
山にいる日数ってなると、200日とか? 滑る時期は4月、5月、11月。7~8月は登山ガイドをして、それ以外は登山道の道直し。そんな感じで年中ほぼ山にいる。道直しに携わるのは、山を見る力が養われて滑りにもガイド業にも生きてくる。地元の富山が山の仕事に恵まれてるのはありがたいなと思ってます。

雄大な立山の山麓に生まれてスノーボードをして、この土地の魅力はどのように感じている?
小さい頃から立山連峰は見上げてたというか。県外に行って戻ってきたときに、この立山の山並みとかを見て「あ、帰ってきたな」って感じがするっていう、シンボル的なものが地元にあるっていうのはすごくありがたい環境だなって思いますね。雪が降れば「あ、雪ついたな」とか「山白くなったな」とか見えるんで。そしたら「ちょっと様子見に行こうか」って山に上がることもできる。

ローカルだからこそできる、山との向き合い方だね。
昨日今日降って、明日晴れるからじゃあ明日上がろうとか、パっと行けて。いい場所にいられるっていうのは地元の強みのような気がしますね。春だと夕方になれば綺麗なオレンジ色になって、雪も締まって昼間よりも板が走ったりする。そういう良さってやっぱり上にいる人じゃないと味わえない。泊まりに来ててラッキーだったら滑れるけど、やっぱりタイミングが命で。

 

 

ハイクして一発? 大変じゃね? みたいな感覚だった。

 

 

toshitaka-nakamura 中村俊啓

 

 

立山の山を滑ろうって意識したのはいつ頃から?
初めて立山の山を滑ったのは、22歳の頃ですね。それまでは高鷲スノーパークでディガーをしてて。ハーフパイプとパークをやってたんで。ハイクして一発? 大変じゃね? みたいな感覚だった。登山では行ったことあったんですけど、春からどうしようかなと思っていたシーズンに「立山あがってみたら?」って、友達に勧められて。

地元の山だけど、若いときには滑る場所という意識はなかったんだね。実際に滑ってみてどんな印象だった?
ハイクアップしてその1本でどのラインを滑るとか当時にその考えはあまり持ってなくて。地元だけど意識していなかったですね。立山を滑ってから考え方と世界が広がった。すげぇな、海外みたいだなって。たぶんこれをやっていなかったら、どこかでスノーボードには限界を感じていたような気はしますね。たぶん俺は、超デカいジャンプとか無理ですもん。クリフは行けるかもしれないけどダブルコークとか絶対無理(笑)。

 

 

これヤバいな、って思われる一生モノの写真を残したい

 

 

toshitaka nakamura 中村俊啓

Photo: Shin Otsuka

 

toshitaka nakamura 中村俊啓

 

 

夏も冬もつねに山にいることで、スノーボードに生きてくるのはどんな部分?
まわりの景色とか変化とかそういうのをすごくよく見るようになった気はしますね。山の上にずっといることで、ちょっとした変化がわかる、第六感的な感覚が研ぎ澄まされるような気がする。だから、つねに山にいることが立山だと特に生きてくることはありますね。夏山でも滑る目線でしか見てないですもん。あのラインいいなとか、あそこ良さそうだなとか、夏場に地形図を見てここ滑りてぇなぁとか。知らない山でもフィーリングでガンガン行っちゃうような天才系の人もいるとは思うんですけど。北アルプスだけで考えても、もうちょっと奥深くに行きたいなぁって思ってます。

それはどんな場所を狙ってるの?
去年、立山から薬師岳までずっと縦走して、そのときに見えた山が鷲羽岳とか三俣蓮華岳、水晶岳、北アルプスの心臓部っていわれてる辺り。一緒に行ってくれる仲間もおるし、スノーボーダーで滑ったっていう記録はそんなにないって思うので、狙っていけたらいいなって思ってます。ありがたいことにカメラマンもいるし、これヤバいな、って思われる一生モノの写真を残したいですよね。

スノーボードをしてるなかで、滑り方とか考え方で大切にしてる部分はどういったところ?
やっぱりラインを一番に考えて過ごしてる。斜面とか地形があったとしたら、どんな風なラインがつくかなとかを考える。ジャンプでもいいし、いいバンクがあるならそのバンクを使えるようないいターンでもいいし、1本のラインのなかで自分のやりたいアクションを上から下までバチっと繋げることができたら、最高だなと思うっすね。ラインの中にピークがあるというかアクションがあるような。そんなラインが理想。

 

 

toshitaka-nakamura 中村俊啓

 

 

バックカントリーで滑る時間のなかで、最高だなって思うときはどんな瞬間?
登りはじめから滑り出しまで、光のあたる位置を狙ってコンディションやシチュエーションがイメージ通りにバチってハマったとき。日のあたりを計算して、考えながら滑る斜面を選択して、それがバチっとハマったら気持ちいいっすね。自然相手だから思い通りにならないのが当たり前だけど、それが面白いっていうか。

立山連峰を中心に、ガイドとしても活動しているけど、ガイドとして目指してることもあるの? 
スノーボードやバックカントリーの楽しさとかって、実際に自分でやっとって、楽しさがわかってくるじゃないですか。リスクと楽しさをちゃんと伝えられるようになれればいいなっていうのは思ってますね。みんなが楽しく笑顔で帰ってもらえたらそれが一番いいんで。俺が持ってるのは登山ガイドっていう資格で、ガイドのエキスパートとしての山岳ガイドはさらにもうひとつうえ。岩登りとかクライミングをガチでやってきたような人たちも一緒に受ける資格だから、簡単に取れるものじゃなくて。

滑り以外の動きと知識が、高いレベルで必要になってくる?
体の動きひとつをとっても、スノーボーダーが滑っているときだけに考えているような、細かいところを彼らは岩登りの世界でやっていて、それを言葉で伝えていく。無意識のうちに高いレベルのことをやっているときも絶対にあるし。そういうのもしっかり学ばないといけないなって思いますね。今のところバリバリガイドやってますっていう感じではなくて、勉強中っていう状態ですね。仲間うちで登るときに考えるひとつの材料として、提案をできる立場、考えられる立場みたいな役割。今はまだまだ自分が滑りたいし、自分の滑りがしたい。

今後もラインの滑りを突き詰めていくの?
エキサイティングにアグレッシブにっていうのじゃなくても、みんな楽しく安全に仲間と滑ってこれたら、それはそれですごくいい。そんな気持ちはありながらも、やっぱりもうひとつ上の自分の限界を超えていくようなスノーボードをしたいなと思う気持ちもあるし。裏と表、理想と現実があるというか。でもこの理想をかなえるために、目の前の現実をひとつずつクリアして、次の段階にどんどん行けたらいいですよね。あそこ行きたいけど正直まだ怖いなって思うような斜面もある。そんな斜面を見て、チャレンジ精神というか目標にはしながら滑っていますね。イメージはつねにしてる。

写真、映像、滑りを残して伝えたいメッセージは?
まず、一緒に山に登れる仲間がいて、撮ってくれる相手もおって。それってすごい恵まれとることだったりする。滑ってるのは自分だけど、その周りの人たちがおってくれるからこその1枚だったり瞬間だったり、スペシャルな体験をさしてもらっとる。その環境だったり、周りの人たちが許してくれとるから成り立っとるような、そんな写真が俺は多かったりすると思う。その写真を手に取った人が、自分らがどんな世界でスノーボードしとるかを見て、「あ、いいな」って思ってもらえたらそれが一番俺は嬉しいですね。スノーボードしたいなぁとかこんな場所で滑ってみたいなぁとか思ってもらえるような作品を残せたらいいなと思ってますね。

 

 

乗れば乗るだけ上手くなっていく。飽きない遊び

 

 

目標的なゴールはある?
いや、終わりはないと思いますよ。スノーボードって正解がないような遊びじゃないですか。楽しければそれが正解みたいなところもあるし。たぶん快心のランとかそういうのは出てくると思うけど、それで満足して終わるかっていうと、それで終わんないし。

やればやるほど楽しみ方も広がっていくしね。
そうなんですよ。満足するかな? スノーボードが日本に入ってきて、当時から今もバリバリやってる先輩たちの姿を見続けとると、まぁやっぱり辞められなくなるんだなぁみたいな。なんかこう勇気をもらえるっすよね。先輩たちの背中を見てると自分もまだまだ滑れるなと。もちろんスピンとかそういうのを考えたらできなくなることは当然あるんですけど。それでもやっぱり純粋に滑ることだけで見たら年々うまくなるじゃないすか。ただシンプルに板に乗って、地形に合わせて滑るっていうのはたぶん乗れば乗るだけ上手くなっていく。飽きない遊びですね。

 

 

 

toshitaka nakamura 中村俊啓

中村 俊啓 / Toshitaka Nakamura
1984年8月26日、富山県立山町生まれ。地元、立山に向き合い続けるスノーボーダーであり、登山ガイドをはじめ1年を通して山に密接したライフスタイルをおくる。北米の最高峰デナリを登頂するなどガイドとしても活躍は多岐にわたる。北アルプスの未開のフェイスを狙い続ける生粋のアルパインスノーボーダー。

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