EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

関口 敬 Takashi Sekiguchi

関口 敬 / TAKASHI SEKIGUCHI「誰もやってない場所を滑るっていう気持ちいいものはない」

自分の信じる道を探求し続け、周りに合わせることなく生き様を残すことに没頭し続ける、ひたむきに真っ直ぐな男、関口 敬。
新潟・南魚沼エリアの国道17号線から見える山々の裏側のファーストスポットにこだわったフルパートの初公開するとともに、スノーボーダーとしてのマインドを探るインタビューをお届け。

 

Photos by Akira Onozuka, Go Ito. Interview by Epic Snowboarding Magazine.
Special Thanks: Salomon Snowboards.

 

Takashi Sekiguchi Fullpart

 

 湯沢、南魚沼といえば数多くのスキー場が点在し2000年代のパークブームの時代にはパークやパイプのメッカとして数多くのライダーを輩出したエリアだということはご存知かもしれない。けっして標高が高い山に恵まれた地域というわけでもないが、豊かな降雪量に恵まれた雪深いエリアだ。南魚沼の山々を開拓しバックカントリースノーボーディングに没頭するピュアスノーボーダー、関口 敬に地元の裏山で話を聞いた。

 

 

関口 敬 Akira Onozuka Epic Snowboarding magazine

Photo: Akira Onozuka

 

ホームマウンテンは?
ホームマウンテンは地元、南魚沼の野山だね(笑)。バックカントリーのフィールドに行くことが多いから最近は野山って言ってる。

スノーボードのルーツを少し聞かせて。10代の頃はパイプをやってたよね?
当時は上越国際スキー場でパイプをずっとやっていて19歳のときにプロ資格を取った。その年には辞めたんだけどね。次の年からパークに入りはじめて、石打丸山スキー場をずっと滑るようになった。

プロ資格をやめた理由は?
大会に出て成績を競う競技もスノーボードだけど、もっと自由というか、自分が求めてるものはそこじゃなくてスノーボードの表現はほかにもあるなって思って。

それからhotdogg Filmsで撮影をはじめたり、撮影にフォーカスしていったのかな?
hotdoggは刺激あるメンツたちとセッションして、撮影をしていくなかで映像と写真を残したいって意識がさらに高まったね。自分が思い描いてた自由を表現をできるところだった。そこがきっかけで成長したというか。

 

 

Akira Onozuka 小野塚 章 関口 敬

Photo: Akira Onozuka

 

あきらかにヤバイでしょっていうラインも攻めたい。残したいものは尽きないね。

 

 

南魚沼エリアの山ってどんなところ?
とりあえず地形が凄いと思うな。特別に標高は高くないし、雪質も良いわけじゃないんだけど、やっぱり魅力を感じる地形というか簡単にやらせてくれないところ。面ツルでパーンってひらけて、「はい!」滑れますっていうところはほとんどなくて、どこエリアもそうだけど、山を見て地形を判断しないと滑れないっていう。まぁその難しさが面白いよ。

バックカントリーに入りはじめたきっかけはどういう感じなの?
変な話、小学生の頃から田んぼの畦とかでキッカーを作ったり、ちょっとした裏山とかに登ったり、スキー場の脇の人目につかない地形で遊んだりしてた。そこからはじまってるんじゃないかな? って思う。

そうなんだね。今、敬が表現したい滑りはどんなもの?
まだまだ飛びはやりたいね。南魚沼のバックカントリーだと雪がいい時期が短いから、限られたタイミングの理想のコンディションでなにをするか? って悩みもある。一番は今はジャンプだけど、地形がボコボコだったり、あきらかにヤバイでしょっていうラインも攻めたい。残したいものは尽きないね。

 

 

関口 敬 Go Ito Epic Snowboarding magazine

Photo: Go Ito

 

スポットはどんな風に探してるの?
夏山も地形そのものは出ているから、斜面の向きをチェックしてスポットは1年中探してる。冬も撮影以外はほぼ毎日ロケハンみたいな感じだね。知ってるポイントもちょっと奥に入ればまた違うしね。次から次へどんどん気になるスポットが出てくるし終わりがないなって思う。

最近はモービルをやってるけど、行き着いた経緯は?
歩いて登って滑ることに、体力と時間の限界を感じたよね。必然的かな。南魚沼はやっぱり標高が低いし気温も高い、だから厳冬期のいいシーズンが短いから、その時間と体力をどう使うか? っていうのがキーワードで、そこをいかにシュッとこう、まぁ段取りだよね。段取り八分みたいな。理想のコンディションが来るときに、撮影をできるベストな状態にしておくというか、道作りだったり、カメラアングルだったり段取りの全部をね。その一瞬のタイミングを逃さないようにするためにそういう意味じゃモービルは手っ取り早い。モービルは乗るのが難しいからそんなに簡単じゃないんだけどね。

 

 

関口 敬 Akira Onozuka Epic Snowboarding magazine

Photo: Akira Onozuka

 

誰もやってない場所を滑るっていう気持ちいいものはない

 

 

今回のパートについて聞きたいんだけど、どういうパートになった?
正直、まだまだ納得はできない感じだけどね。ロケハンから撮影まで2〜3シーズン地元の未開拓のエリアを中心に動いて、数少ないタイミングでの撮影だったから大変だったかな。

それはどういう理由で大変だったの?
フィルマーがつねに張り付きでいないっていうこと。それとやっぱりコンディション的に俺たちが言う南魚沼のハイのハイシーズンって呼んでる時期があって、シーズンのなかでもとくにいい時期が、1月末から2月はじめの10日間ぐらいかな。そこに狙ったスポットをあてるっていう。さらに天気が当たるかって問題もあるからね。

そのハイのハイシーズンにファーストだったり狙ったスポットをやっていくんだね。スポットにこだわっているところといえば?
基本的にはファーストスポットを狙いたいね。下調べをしといてコンディションが噛んだときが勝負。やっぱり人が入ってないエリアとスポットを自分たちで開拓して、ファーストディセントはやっぱりキーになってくるかな。誰もやってない場所を滑るっていう気持ちいいものはないよね。そこにはこだわりたい。

よく山に一緒に入るメンバーといえば?
亮くん(石坂)塁揮(増田)、達哉(南雲)、スポットはよっては、貴(中村貴之)だったり地元の仲間とかね。

なるほどね。例えば海外に行ったり、国内にもいろんなエリアがあると思うけど、地元をつめていきたいんだね。
そうだね。環境のいいところはどこにでもあるんだろうけど、住み着くじゃないけど長時間、長期で向き合わない簡単にできることじゃない。だから地元に刺さってるのかな。

パートのなかでもとくに印象深いスポットやフッテージといえば?
巻機山かな。数シーズン、タイミングとコンディションを見て、撮影までに時間をかけて何回も登って狙った斜面だし、いいコンディションで撮影できる日は限られてるなかで自分の描いた通りの理想のラインで滑れたから最高だったね。

 

 

関口 敬 Akira Onozuka Epic Snowboarding magazine

Photo: Akira Onozuka

 

アクセスが簡単じゃないロケーションでの撮影は撮れ高を含めて難しいと思うけど、モチベーションはどこからくるの?
単純に言ったら、好きなんだろうね。自分の嗅覚を使って、頭で考えて、足を使って、理想のスノーボーディングができることを楽しんでる。それはバックカントリーならではの感覚だからね。自分と向き合う感じ。やってきたことが映像や写真で伝えることができるしね。

タカシにとって映像と写真を残す意味っていうのは?
思い出に近いのかな(笑)。スノーボードをなんのためにやってるってか? って自分が生涯やりたいもの。もしスノーボードをどこかで辞めてたら今の自分ははないし、ずっと続けてきて形に残すことはモチベーションが上がる。それがこういうタイミングで、取りあげて貰えるのはスゲー嬉しいことだし、自分のやってるスノーボーディングを知って貰えたら嬉しいよね。

 

 

関口 敬 Go Ito Epic Snowboarding magazine

Photo: Go Ito
戦国時代に上杉謙信の軍勢が関東へ進軍の為に使ったことからその名がついたという南魚沼市から谷川連峰へと連なる謙信尾根。
ガスが立ちこめるなかの4時間ハイクのご褒美には、極上のパウダーと太陽、そして湯沢町のシンボルといえる山の斜面でのファーストディセントのメイク

 

 

湯沢、南魚沼のみんなが知ってるリゾート地の山の裏側をつめてるライダーは少ないし、ファーストアタックの斜面でフッテージを残することは貴重なことだよね。
人が入っている場所よりも自分の嗅覚で足を使って山に入って、そこで自分が求めてるスポットを見つけたときのあの喜びに変えられるものはないよね。まぁ自己満足でしかないんだけどね(笑)。もっと簡単にアクセスできる山もあるけど、でも俺は仲間と動いて開拓していくことが好きなんだろうね。

これからも地元の山を突き詰めていくんだね。
突き詰めてもまだまだあるからね。本当に出てくるから。南魚沼で実際にいいパウダーを滑れるのなんて1ヶ月くらい程度だし、1年に撮影できるタイミングっていったら限られれてるからね。1週間かけて行動計画を立てて、5時間かけて登って、滑るのは20秒とかだよ(笑)。やっぱり好きじゃとやれないよね。

スノーボードから得ていることや感じてることはある?
これは最近なんだけど、自分の人生を満喫したほうがいいなって。人それぞれの生き方があるだろうけど、中途半端じゃなくて全力でやるのが大切。山と深く向き合うようになって食生活も含めてライフスタイルが変わっていってる。それくらいスノーボードの影響は自分にとってデカい。

 

 

関口 敬 Akira Onozuka Epic Snowboarding magazine

Photo: Akira Onozuka

 

2019シーズンに狙ってるプロジェクトや撮影はあるの?
一生涯で行けたらいいよねって思ってた斜面があって、そこにアタックしたいと思ってる。下積みじゃないけど、小さい山から入りはじめて気がつけばアルパインまでになってきて、次に求めるところは必然的にその斜面になっちゃってる。行ってみてもしかしたら無理かもしれないし、状況判断を慎重に狙っていこうかな。何年も見てきた斜面だし、焦っていける斜面でもない。しっかりとした計画を立ててアタックしたい。その斜面の映像を入れて仲間たちと撮り溜めてきた映像をひとつの作品として形にするよ。

 

 

関口 敬 Takashi Sekiguchi salomon
関口 敬 / Takashi Sekiguchi
1986年4月21日生まれ。新潟県南魚沼市出身。上越国際の麓で生まれ育ち、スノーボードに出会った10代からスノーボードビデオに影響を受ける。19歳でハーフパイプでプロ資格を取るが、撮影で自身の滑りを表現をする生き方にシフトチェンジ。パーク、ストリート、バックカントリーに没頭し気がつけばアルパインに目覚め、今では南魚沼エリアでは誰よりも裏山を開拓するリアルスノーボーダー。

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Instagram: @takashi0421