EPIC SNOWBOARDING MAGAZINE

satoshi saito 斎藤 哲 241

齋藤 哲「もっと滑り込みたい。まだまだ尽きない」

長野・菅平高原の牧場にて育ち、大自然と密接にリンクしたライフスタイルを送る斉藤 哲。
地元周辺の山々にフリースタイルなラインを刻み続けるファイティングファーマーが見据えるスノーボーディングとは。

Interview by Epic Snowboarding Magazine, Photos by Harada Gaku, Epic Snowboarding Magazine, Special Thanks : 241 clothing

 

 

齋藤 哲 satoshi saito 241

Photo: Harada Gaku

 

スノーボードを始めたころはどんな風に過ごしてた?
中学2年のときにGreen.Labライダーで従兄弟のタカシくん(伊藤 高)もちょうどスノーボードにハマった時期で、ウチの親父さんに単管パイプを溶接してレールを作ってもらって、夜も投光器つけて毎日ふたりで滑り明かしてました。

ライダーとして活動し始めたのはどういうタイミングだった?
キッカケは地元でライダー活動していたGreen.Labの代表の中山二郎さんと一郎さん兄弟の影響が大きいですね。その頃、Hi-seeさんの撮った写真でふたりとも雑誌の表紙だったりグラビアを飾っていて憧れてましたよね。それから、Green.Labの繋がりでウチの牧場施設のコンクリートレッジ to ダウンレールの撮影で初めてHi-seeさんに撮ってもらったのが、ライダーとしての最初の動きだった気がします。

ライダーとしてGreen.Labと関わるようになったのもその時期から?
Green.Labはテストボード作りから近くで見させてもらってました。唐松の間伐材を使った山喜ウッドコアの話からまず始まって、Green.Lab以外のブランドでもそのコアが使えれば間伐材の有効利用に繋がるという話になって。その流れで山喜ウッドコアを使ったSun Snowboardsを和泉健太郎さんが立ち上げることになって、Green.LabとSunのダブルサポートみたいな感じでしたね。メチャクチャ贅沢な感じですね。

241でもいろいろな動きをしているけど、チームメイトはどんな存在?
241ファミリーはセッションするたびに刺激をもらえるし、高めてくれる貴重な存在です。自分もみんなを高められるように頑張ろうと思える。

影響を受けたスノーボーダーといえば?
影響が大きかったのは、一郎さん二郎さん兄弟ですね。やっぱりスタイルがオリジナルで、人の真似じゃなくて自分を磨いていくことでいいんだって思わせてくれた。セッションを一緒にしていた美谷島 慎さんだったり五明(敦)さんだったり、本当に滑りもスタイルが突き抜けてた。

当時影響を受けた映像作品はある?
BPトレーディングからリリースされていた『Scene in This One (’05)』。ライダーが個々にビデオカメラを持っていて、例えばひとり目がドロップする所を撮ってもらって、ある程度で止まってカメラを構えて次の人を撮って、また次の人って感じで、最後に滑る人は丸々一本のラインを通して撮れていて、滑り手たちよって考えられた映像。今でこそ撮り方やアイデアも溢れてる時代だけど、あの時代の革新的な作品のひとつですね。

 

パウダーの気持ち良さ、ぶっ飛んでいける爽快感を求めて

 

バックカントリーに入り始めた目的は?
単純にパウダーの気持ち良さ、ぶっ飛んでいける爽快感を求めて。そのときそのときの山の表情だったり、光と影、結晶のキラキラ、ときどき見せる息をのむほどの景色のなかで滑りたいっていうのが、目的ですかね。リスクもつねにつきまとうし自己責任だけど、言葉じゃ表せない魅力がありますね。

菅平エリアの山の魅力を聞かせて。
内陸で積雪は少ないんですけど、降れば雪質が最高! 峰の原高原スキー場は地形も豊富だし、菅平のスキー場も広くていろいろな楽しみかたができます。標高2207mの根子岳はキャットサービスもあったり、百名山で標高2354mの四阿山も面白いですよ。

地元の斜面は毎年どんどん開拓していってる?
裏山の全部のラインは行ったかな。ロングラインは行き尽くした感はあるけど、クリフだったり、中間のポイントだったり、まだまだやりたいことは尽きないですよね。コンディションのいいときに行きたいラインとかたくさんある。

先シーズンどう過ごしていたの?
1月までは雪があまり降らなくて、2月に入ってからは良く降ってくれて、地元のエリアも何年かに一度あるかないかの良いコンディションだったんで、ご来光から日没までセッションしたり。3月は初海外、アラスカトリップに3週間行って、帰ってきてウチの牧場で241とGreen.LabクルーでDavos Campをやったりと、またスノーボーディングの幅が広がったシーズンでした。

 

 

菅平 根子岳 四阿山

齋藤 哲 satoshi saito

 

 

スノーボード以外は何して遊んでるの?
スケートボード、マウンテンバイク。古武道なんかも歩き方とか、身体の使いかたや精神的な面もスノーボードに通ずるところがあるから面白い。あとはナイフ投げ手裏剣、コンパウンドボウ(滑車の付いたアーチェリー)。

遊びもワイルドだね。
まわりが山の中だから自然とそういう楽しみ方になりますね。夏も冬も自然のフィールドを活かして遊び尽くせたら面白いですよね。

圧雪車を持ってるって聞いたけど、どういう経緯で手に入れたの?
長野の木島平の小学校で使われてたピステンなんですけど、オークションに27万で出てて、面白がって入札したら見事に落札してしまって…。鉄クズの値段にしても安いぐらいですよね。本体は業者に大型で運んでもらって、キャタとかミルとかブレードは自分たちで取りに行って、キャタも痛みが酷くて一本一本丁寧に補修して、油圧シリンダーの油漏れとか全部整備して。そのピステンでをキッカー作ってセッションしたときは感動しました。

 

自宅のダボス牧場に241、Green.Lab、Prana Punksのメンバーが集結し、テント泊で行ったDavos Campセッション。

 

DIYでなんでも作っているけど、そのマインドはどこから?
ここでの生活も牧場の仕事も、他人に頼んでたら成り立たないので、機械の整備もするし生産中止の部品や専用工具もなければ作る。その精神がスケートのランプやキャンピングトレーラーを作ったり、スノーモービルをカスタムしたり、仕事が遊びに繋がって、遊びも仕事に繋がっていくんだと思います。

まるで日本のマイク・バシッチだね。
いやいや俺なんか全然レベル低いけど、インスパイアはされますね。次の計画は倉庫兼自宅を建てるのが目標で、少しずつ進めていきます。

 

 
davos ダボス牧場
齋藤 哲 satoshi saito 241

 

齋藤 哲 satoshi saito 241

 

 

もっと滑り込みたい。まだまだ尽きないですよね

 

 

スノーボーディングの滑りのスタイルやこだわりは?
スケートライクなスノーボーディング。思いっきりオーリーしてガッツリ抱え込んでノーズぶっ刺しながらバックサイドに少しシフティしてる感じとかが最高! デカい山でのラインも綺麗に繋ぐってのはもちろん意識しているけど、ストリートでスケートのセクション当て込むみたいな感覚で、セクションからセクションにどうやったら綺麗にラインを描けるか、セクションが中心にあってラインがあるみたいな感じで自分のラインを探すようにしてます。

241 & Green Lab.クルーのアラスカトリップはどうだった?
フェリーか飛行機でしかアクセスできないコルドバという港町に行ったんですが、何から何まで衝撃的でした。海抜0mから3000m級の山のピークがドカン、ドカン、ドカンってある感じの、スノーボーダーズパラダイス。モーターホームをベースに歩いて山を登って滑るスタイル。毎日よく歩きました。

滑る斜面はどういう風に選んでいたの?
ローカルのダニーに登るルートはだいたい聞いて、あとは自分たちで開拓してく感じが良かった。初めてのアラスカで雪質を歩きながら感じて、ピットを掘ってみて滑る。あそこの斜面は雪質がよさそうだから回り込んで登れば安全に早く行けそうだねとか、五感を研ぎ澄ませていく感じが面白かった。暗くなった帰り道で、山に放し飼いの2頭の犬に30分ぐらい本気で威嚇されて、足止めくらったのは本当に危険を感じましたね(笑)。

 

未だ見ぬ斜面を目指す、仲間との冒険。241、Green.Labによるアラスカトリップムービー、“Rord to Cordova”。

 

初めてアラスカのビッグマウンテンを滑って、意識的に変わったことは?
いろんな斜面、雪質、地形をもっともっと滑りたいと思いました。もう一段階、すべてにおいてレベルアップできるように挑戦していきたい。できる限りもっと滑り込みたい。まだまだ尽きないですよね。

スノーボーダーとしての目標は?
自分が思う最高の瞬間瞬間を映像や写真で切り抜いて表現して、共感してもらえたり、自分もやりたいって思ってもらえたら最高! だから最高の瞬間が感じれるような滑りをつねにできるような、転んだとしてもとにかく挑んでいく攻めの滑りするのが目標ですね。

 

 

 

齋藤 哲 satoshi saito 241
斎藤 哲 / Satoshi Saito
1986年12月25日生まれ、長野県出身。標高1581mの高原地帯、菅平にて牧場を家族経営するスノーボーダー。育った家の庭が120ヘクタールもの面積を持つ山(東京ドーム27個分)という稀有な環境で幼少より育つ。地元に根を張り、中山二郎や美谷島 慎、豪らとともに周辺の山々に自らのラインを刻むライフワークをキープ。それと同時に他エリアのデカい斜面にも照準を合わせ始めたナチュラルボーンスノーボーダー。

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